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オルセー美術館展でモネ、セザンヌ、ゴッホの名作を鑑賞・・・作品の世界を旅した思い出 [私的美術紀行]

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オルセー美術館展2010」出品の名画
by 展覧会クリアファイルより

5月のボストン美術館展に引き続き国立新美術館の「オルセー美術館展2010―ポスト印象派展」を鑑賞してきました

日本では1996年以降、大規模な「オルセー美術館展」が3度開催されているし、私も娘もパリのオルセーも見学してお馴染みの作品が多いのですが、今回は過去最大規模の115点が来日。そのうち60点が初来日、モネ5点、セザンヌ8点、ゴッホ7点、ゴーギャン9という組み合わせの貸し出しは最初にして最後というふれこみです。

ポスト印象派の画家たちが活躍した1880年代半ばから20世紀初めまでの近代絵画が最も輝いた時代の熱気が伝わるような作品が展示されています。
今回も“この作品を見ているはずだが記憶がない”作品との出会いが結構ありましたが、お馴染みの作品でも自分が実際に作品ゆかりの場所を訪ねた後で再び鑑賞すると作品や画家との距離が近づいたような気分になります

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★モネ「睡蓮の池、緑の調和」★
:1899年 
by 絵はがき

印象主義の代表者モネ1899年頃から睡蓮の池をテーマにした作品を描いています。

初めは池に架けられた日本風の緑の太鼓橋や柳の木などをモチーフに描いていましたが、20世紀にはいると周辺の景色は減少。(パリ・オランジュリー美術館を飾る最晩年の睡蓮は、朝から夕刻へ、光と色を変化させる水面が映す世界が巨大な画面一杯に広がっています。)

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7月初めのジヴェルニー

ジヴェルニーのモネの家と庭園は、春から秋にかけて公開されており、初夏には睡蓮の花が咲きます。私が訪れた季節、睡蓮の花は殆ど終わっていましたが、モネが造園した池の周りの緑は絵画の世界そのままでした。

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モネの家

家の鎧戸や階段、ベンチも太鼓橋と同じ鮮やかな緑色。睡蓮の池をゆっくり散策し、モネの浮世絵コレクションが飾られた旧宅の室内を見学しました。寝室や食堂もそのまま保存されていてモネの私生活を垣間見ることができます。

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( セザンヌサント=ヴィクトワール山」★
:(1890年頃)
by 絵はがき

南フランスのエクス=アン=プロヴァンスに生まれ育ったセザンヌは、エクスの北東に堂々と聳えるサント=ヴィクトワール山をテーマにした作品をいくつも描いています。パリという都会の空気になじめなかったセザンヌにとって、ゴツゴツした岩肌を見せた無骨な山の、素朴で堅固で力強い姿はセザンヌの精神的支柱だったのではないかといわれています。

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(故郷南仏を拠点にしたセザンヌのアトリエ近くから臨むサント=ヴィクトワール山
写真撮影の未熟さから山はほんの少ししかはいりませんでした)

静物画を得意としたセザンヌの作品に以前はあまり興味がなかったのですが、南仏旅行の折にセザンヌのアトリエを見学しました。画家の生前と同じように保存されたアトリエには、静物画を描くための果物が置かれ、部屋の隅には背の高いセザンヌが愛用していたベージュのコートが掛けられていました。

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セザンヌ「水浴の男たち」★
:(
1890
年頃)by 絵はがき)

水浴する人物のモチーフはセザンヌが繰り返し描いていますが、この作品は、セザンヌがいかに構築的な画面構成を重視したかをうかがわせる1点といわれています。

★モデルとして辛抱強く同じポーズをとることが取り柄だった(?)セザンヌ夫人、オルタンスの肖像画も出展されています。

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ゴッホ
馬車、アルル郊外のロマのキャンプ」★
:(
1888
年) by絵はがき)

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アルルの跳ね橋

アルルにユートピアを夢見たゴッホの
有名な作品「アルルの跳ね橋」に描かれたラングロワ橋は現存しませんが、近くに似たような橋が復元され、観光名所になっています。

夏の季節、橋の近くの草むらにはこの作品のようにキャンピングカーがいくつもとまっていました。
ガイドさんの話では、ドイツ人が多いというオートキャンパーたちは自国から食糧などを積み込んでくるので、地元の人々からはあまり歓迎されていないのだとか。

ゴッホの絵画は南仏アルルの光によって「生命の黄色」が生まれたといわれますが、ロマの馬車を描いたこの作品の色遣いはもう少し穏やかです。

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( ゴッホ星降る夜」★
:(
1888年)by絵はがき)

ローヌ河畔の夜景を描いた作品ですが、実際には北の方角に見えるはずの北斗七星が輝いていることから必ずしも実景に忠実な描写ではなくいくつかの実景を組み合わせたものといわれています。

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「円形闘技場」からみたアルルの街
奥の方にローヌ川が見える)

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( 
ゴッホアルルのゴッホの寝室」★
(1889
) by 絵はがき)

ゴッホは今回出品された作品と同じテーマで3枚描いていますが、これはサンレミで制作された3作目。

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(今秋のゴッホ展チラシ)


今秋同じ国立新美術館で開催される「ゴッホ展」では
1888年に描かれた作品が出品され、アルルで借りた「黄色い家」の寝室を会場内に再現する予定なので見比べてみるのも面白いかもしれません
(サンレミで制作されたもう一つのレプリカはシカゴ美術館にあります)

<ココに注目!>
オルセーの作品では壁の肖像画は自画像と女性の肖像画ですが、ゴーギャンがアルルに到着する直前に描いた
1作目では、詩人ウジェーヌ・ボシュと友人の兵士でした。

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クレラー=ミュラー美術館蔵の
★ゴッホ夜のカフェ・テラス」★
:(1888年)
by 週刊「世界の美術館」2009.2.5号)

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アルルでは、ゴッホの絵をを再現した『カフェ・ファン・ゴッホ』にも行ってみました。アルルの中心であるフォーロム広場にあり夜の観光名所として賑わっていますが、夏のアルルの空が真っ暗になるのは
9時過ぎなので夕食後にお出かけください。


◆「オルセー美術館展」鑑賞の前に有地京子先生の名画解説講座を受講して知識を深めると、美術展が10倍楽しめる!
講座の日時など詳細はこちらをクリックしてください。


※国立新美術館開催日程
◆「オルセー美術館展2010」:2010816日(月)まで開催中
◆没後120年「ゴッホ展」:2010101日(金)~1220日(月)



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ボストン美術館展を鑑賞・・・2010年の東京は、印象派・ポスト印象派展の当たり年 [私的美術紀行]

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ボストン美術館展のチラシより)
ゴッホは「オーヴェールの家々」を描いた1890年に亡くなった★

GWのさなか、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催中の「ボストン美術館展に行ってきました。

連休前に九州旅行に出かけたのでGWは遠出を自粛して自宅に籠もっていたものの、雨の4月とは様変わりの好天気に思わず家を飛び出してしまいました。
しかし都心も人出が多く、チケットを購入して52階のギャラリー入口に辿り着くまで20分以上かかり、大混雑の会場内で人混みを掻き分けて名画のタイトルと解説ボードを読むのもひと苦労でした。リタイア生活の私ひとりで鑑賞するなら連休のさなかには行かないのですが、ボストン美術館は10年前、まだ大学生だった娘と一緒に訪ねているので混雑を承知で決行したのでした。

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ボストン美術館展のチラシより)

レンブラントに、高額の制作費でほぼ等身大の2点1対の全身肖像画を発注したのはアムステルダムの上流市民:
この作品が描かれた1934年、レンブラントは名門の令嬢サスキアと結婚して大豪邸に住むようになった★


今回は、世界屈指の美の殿堂ボストン美術館が誇るヨーロッパ絵画コレクションから、1620世紀の選りすぐりの油彩画80が、肖像、宗教、日常生活、風景、静物など8つのテーマに分けて展示されていましたが、“確かにボストンで見たことがある”と確信できた作品はそんなに多くありませんでした。
あの時は、美術館巡りの初心者だったとはいえ、美術館のガイドブックで予習してから鑑賞したはずなのに、記憶力の低下なのか、もともとキャパが少ないのか・・・・・・

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ボストン美術館展のチラシより)

ボストン美術館は、世界有数のモネ・コレクションで有名ですが、今回は風景画10点を含む11点が来日。増改築工事期間中の貸し出しだから実現した品揃えといえるでしょう。

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(「ルノワール展」チラシより)

ボストン美術館は、4月まで六本木の国立新美術館、現在大阪で巡回展を開催中の「ルノワール展」の目玉作品「ブージヴァルのダンス」も日本へ貸し出し中です。
国立新美術館では、「ルノワール展」に引き続き、526日からは「オルセー美術館展2010―ポスト印象派展」、10月には「没後120年 ゴッホ展」が予定されています。

実は、今年はボストン美術館だけでなくパリのオルセー美術館も1986年の開館以来初となる大規模な改修工事中。改修費用をまかなう目的もあって、主要な作品を海外に貸し出ししています。中でも、印象派・ポスト印象派の作品の人気が高い日本市場は、海外の美術館にとっておいしい貸出先なのかもしれません。

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(「マネとモダン・パリ」展チラシより)

オルセー美術館とボストン美術館は、4月、丸の内に開館した「三菱一号館美術館」の開館記念展「マネとモダン・パリ」展にも核となる作品を貸し出しています


国立新美術館で20007年に開催した「大回顧展モネ」には同館最多記録の70万人が入場し、今年4月までの「ルノワール展」も33万人を集めて4位になっています。

なぜ、日本では、印象派・ポスト印象派の人気が特に高いのでしょうか?

今では美術館巡りや絵画鑑賞が趣味と公言している私も、美術史や画家の生きた時代やテーマ、作品が描かれた背景などに関する知識が乏しかった頃に鑑賞した印象派より前の名画の理解は表面的でした。もう一度鑑賞することができるならば、自分にとって興味深い発見があるかもしれないのにと思うことがしばしばあります。特に西洋絵画鑑賞に避けて通れない聖書の名場面やギリシャ神話に対する知識は私に限らず多くの日本人に共通する弱点と思われます。

その点、予備知識がなくても自然体で気軽に鑑賞できる印象派やポスト印象派は日本人向きの作品が多い
といえましょう。大量動員が見込める印象派・ポスト印象派の展覧会は、美術館と展覧会を共催する新聞社やテレビ局にとっても魅力あるコンテンツということで、今年のように企画が目白押しという現象がおきるのでしょう。

印象派・ポスト印象派関連の展覧会は、京橋のブリヂストン美術館でも「印象派はお好きですか?」を開催中。今年9月には「ドガ展」が横浜美術館で開催予定です。

私の絵画鑑賞の原点は、小学生時代に見たルノワールの絵でした。鑑賞眼は一流の作品を見ることで養われるのですから、西洋絵画好きでなくても名作揃いのこの機会に美術館へ足を運び実物を間近に鑑賞してはいかがでしょうか。

ボストン美術館展の絵はがきより★

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モネ「庭のカミーユ・モネと子供」(1875年)

モネの最初の妻カミーユがアルジャントゥイユにある自宅の庭で繕いものをしている傍らに可愛い子どものいる母子像。
中産階級の心温まる家庭像を表していますが、この作品が描かれた1875年、モネの長男は8歳で次男はまだ生まれていませんでした。

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モネ
アルジャントゥイユの雪」(1874年頃)

モネと妻のカミーユと幼い息子は1871年末に、パリまで鉄道で10キロほど、南に1区画ほど歩けばセーヌ川の岸辺に至ると言う魅力的な立地の
アルジャントゥイユに居を構えました。


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モネジヴェルニー近郊のセーヌ川の朝」(1897年)

1883年、
ジヴェルニーの広大な敷地を持つ借家に移り住んだモネは、1890年それまで借りていた土地と家を正式に購入して庭園の造成に情熱を傾けるようになりました。

この作品が描かれた場所は、
ジヴェルニーのモネ邸を流れるリュ川に繋がるエプト川がセーヌ川と合流する地点で、モネはそこにアトリエ代わりの平底船を停泊させていました。
モネは、場所を厳密に固定し、時間も日の出前後のごく限られた時間帯にしぼって、同一主題の作品を複数制作したようです。

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セザンヌ「池」(1877-79年頃)

印象派より革新的な作品を描いたセザンヌが評価され始めるのは50歳過ぎ。セザンヌは厳格な父の経済的援助を得るため、内縁の妻と子ども(1972年生まれ)の存在を父には隠し通したといいます。この作品が描かれた1877-79年頃、セザンヌは妻子のいるパリと実家のあるエクサン・プロヴァンスを行ったり来たりしていました。そんなエピソードを知ると、この作品はセザンヌが思い描く“休日の家族風景”にもみえてきます。


名画の秘めごと―男と女の愛の美術史

名画の秘めごと―男と女の愛の美術史

  • 作者: 有地 京子
  • 出版社/メーカー: 角川マガジンズ
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本



◆西洋絵画の知識をもっと深めたいと思われる方には、私もしばしば受講している有地京子先生の美術解説セミナーをおすすめします。
先生の著書「名画の秘めごと―男と女の愛の美術史」は、大胆なタイトルにちょっとびっくりしますが、私も食わず嫌いだったギリシャ神話が楽しく勉強できる読み物です。

もちろんギリシャ神話だけでなく、画家の知られざる素顔などのエピソードがたくさん紹介されているので、絵画鑑賞の楽しみが増えると思います。














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近頃気になる人物・カラヴァッジョ、バロック絵画の巨匠にして殺人者・・・ [私的美術紀行]

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現在上野の東京都美術館で開催中の「ボルゲーゼ美術館展」に行ってきました。

今回私のお目当ての絵画は、イタリアのバロック絵画の巨匠・カラヴァッジョ最晩年の作品のひとつである洗礼者ヨハネです。

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(絵はがき「洗礼者ヨハネ
ローマ・ボルゲーゼ美術館蔵)

憂いに満ち、脱力感の漂う表情のヨハネは一度観たら忘れない作品になりましたが、カラヴァッジョの作品で今回来日したのがこの1点だけというのはちょっと残念でした。

カラヴァッジョ(カラヴァッジォ)という画家は、日本ではまだその名前があまり知られていませんが、17世紀初頭にローマでバロック絵画を誕生させ、光と闇の演出による劇的な宗教画を数多く描いています。レンブラント、ルーベンス、ベラスケス、フェルメールなど多くの画家に影響を与えたと言われ、かつてのイタリア紙幣で最も高額な10万リラ札の顔になっていた人物です。

神や聖人を理想化しない現実的描写で描くカラヴァッジョの作品は、臨場感があふれており、観るものを惹きつける強烈な個性がありますが、好き嫌いの評価がわかれる画家かもしれません。

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映画カラヴァッジョ」チラシ)

没後400年を記念した映画も観ましたが、その人生は、“光の部分は限りなく美しく、影の部分は果てしなく罪深い”と、映画パンフレットに書かれた通りと言えます。

華やかなルネッサンスが終焉し、カトリック改革の道具として復権した宗教美術ですが、ドラマチックな明暗法と娼婦をモデルにして聖母マリア描くなど、徹底した写実描写で描かれたカラヴァッジョの絵は、しばしば教会から『品位』に欠けるとして祭壇に飾ることを拒否されたそうです

ふとした争いから殺人を犯してイタリア各地を逃亡する中で38歳の生涯を終えたカラヴァッジョは、喧嘩や暴行などで10数回もローマの犯罪記録に名を連ねているという波乱に満ちた人生・・・

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(「エマオの晩餐」:ミラノ・ブレラ美術館蔵
by 「週刊世界の美術館」09.7.16号より)

私がカラヴァッジョという画家の存在にはじめて気づいたのは、1999年のイタリア旅行。ミラノのブレラ美術館で観た「エマオの晩餐」という作品でした。

2人の弟子が、食卓を共にした男が復活したキリストであることを知る場面を描いた同名の作品は、ロンドンのナショナルギャラリーにもありますが、後から描かれたブレラ美術館蔵のキリストの表情の方が個人的には好みです。

ミラノで感銘を受けながら、その後カラヴァッジョのことはすっかり忘れたまま海外の美術館巡りを重ねていた私が、カラヴァッジョの魅力を再発見したのは、有地京子先生の名画解説セミナーを受講したのがきっかけでした。

天才画家にして殺人者という経歴なのに数々の素晴らしい宗教画を遺しているカラヴァッジョに興味を覚えて、手元にあるいくつかの美術書を紐解いてみれば、私は、カラヴァッジョの作品を他にもいくつか鑑賞しているようなのです

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(「アレクサンドリアの聖女カタリナ」:
マドリード・ティッセン美術館蔵
by「週刊世界の美術館」01.2.6号より)

1998年訪問したとき、私はカラヴァッジョの存在をまだ知らなかったがこの絵は見た気がします。

★「キリストの埋葬」:ローマ・ヴァティカン絵画館蔵。
記憶にはありませんが
1999年訪問時、ガイドの案内で宗教画は注意深く鑑賞しました。

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(「バッカス」:フィレンツェ・ウフィツィ美術館蔵
by「週刊世界の美術館」08.12.11号より)


★1999年に訪問したフィレンツェ・ウフィツィ美術館は、素晴らしいガイドさんに案内されて見学。
バッカス」、メドゥーサ」は印象に残っていますが、「イサクの犠牲」は?

★「合奏」:ニューヨーク・メトロポリタン美術館蔵。2000年に訪問していますが・・・

★「トカゲに噛まれた少年」、「エマオの晩餐」、「サロメ」:ロンドン・ナショナルギャラリー蔵。2001年に訪問していますが・・・

★「聖母の死」、「女占い師」、「アロフ・ド・ヴィニャクールの肖像」:パリ・ルーヴル美術館蔵。2001年、2008年の2回訪問していますが・・・

2004年に訪問したフィレンツェ・ピッティ美術館の「眠るアモール」は覚えていますが、「アントニオ・マルテッリの肖像」は記憶なし。

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(「ロザリオの聖母」:ウイーン・美術史美術館蔵。
by「週刊世界の美術館」09.6.4号より)

2007年に訪問しています。多分観たはず・・・

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勝ち誇るアモル」:ベルリン美術館蔵
by「週刊世界の美術館」09.1.29号より)

中には、作品は観た記憶があるがカラヴァッジョ作品という認識がなかったものもありますが、“接近すれども遭遇せず”という状況があまりにも多かったことにショックを受けてしまいました。

海外の美術館巡りが趣味となってからは、事前に必見絵画を予習して行くのですが、カラヴァッジョは日本人にとってあまりなじみのない画家ということもあって必見リストから漏れていたようです。

さすがに、2008年に訪問したベルリン美術館の「勝ち誇るアモル」は印象に残っていましたが、それにしても、他の著名画家の作品の前に記憶が薄れてしまったのか、作品そのものを見落としたのか・・・

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ベルリン近郊・ポツダムのサン・スーシー宮殿
「ポツダム会談」の行われた街には、フリードリッヒ大王の夏の離宮があります。

18世紀のフランス式造園法による美しい公園があり、宮殿の大階段には葡萄が植えられています。
フランス語の“憂いのない”に由来するサン・スーシー宮殿には、ドイツ最古の美術館があり、宮殿ツアーの待ち時間にルーベンスなどの作品を鑑賞しました。

★2008年に訪問した宮殿内美術館にも「聖トマスの不信」という作品があったのです。

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ルーヴル美術館のイタリア絵画展示エリアは「モナリザ」目当ての人で混雑。)

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(「美しき女庭師」:ラファエロの名画も、回廊にさりげなくかかっているので、うっかりすると見逃してしまいそう・・・)



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ボッティチェッリの「春」は饒舌?・・・名画に秘められたメッセージを読み解く楽しみ [私的美術紀行]

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(古都フィレンツェの美術館巡りでルネッサンス絵画に開眼)

1998年のスペイン旅行で“美術館巡りの楽しさ”にめざめた私と娘は、翌年ルネッサンス絵画の宝庫であるイタリア周遊ツアーに参加しました。ローマ→フィレンツェ→ヴェネツィア→ミラノを10日間で巡る旅でしたが、自由時間も多く、各地で美術館の見学だけでなく、ブランドショッピングも十分楽しんだゴージャスな旅でした。当時イタリアの通貨リラは超インフレ状態で、カプチーノ1杯が5000リラ、フェラガモのネクタイは13万リラでしたが、日本円に換算すると現在よりも物価は安かったようです。

バチカン美術館で、ミケランジェロの「最後の審判」やラファエロの「アテネの学堂」などの名画を鑑賞したあとで、フィレンツェへ向かい、ウフィツィ美術館やアカデミア美術館、サン・マルコ美術館を訪ね数多くの名画を堪能しました。

その中で、ツアーで見学したウフィツィ美術館では、ルネッサンス絵画について現地のガイドさんが西洋美術史の知識が浅い私たちにもわかりやすく説明してくれたので短時間ながら充実した鑑賞ができました。

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ボッティチェッリ 「ヴィーナスの誕生」:
「芸術新潮」2001.3月号より)

天上のヴィーナスは、なぜステイタスが高いのか?


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ボッティチェッリ 「春(プリマヴェーラ)」:
「芸術新潮」2001.3月号より)

画面では右から左に時が流れる。

西風ゼフュロスニンフクロリスを襲い、春の女神フローラに変身したクロリスは大地を花で満たしていく。
中央の(地上の)ヴィーナスは、4月の女神。
優美三美神が踊る左にいる5月の神ヘルメス(英語名はマーキュリー)が雲を追い払う。


特に、ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」と「春」は、その前の展示室でチマブーエやジオットの「荘厳の聖母」などの宗教画を沢山みたあとだっただけに、キリスト教の教えのもとでは長い間異教徒として退けられてきた古代の神々の艶やかな姿が印象に残っています。

さて、ボッティチェッリの「春(プリマヴェーラ)」ほど多種多様な解釈がなされる絵画もないと言われているそうです。この絵画には、ギリシャ神話や「新プラトン主義」の思想など色々な要素が盛り込まれており、様々な解釈が成り立つようで、しかも素人目にはどの解釈ももっともらしく思えるとか。

海中から現れた美しい女神の姿が有名な「ヴィーナスの誕生」も、ヴィーナス誕生の経緯に関する“ドロドロした”ギリシャ神話“を知ると、ヴィーナスに対する見方が変わってくるような気がします。

また、ボッティチェッリが描いた植物の描写は種の特定ができるほど正確だというのですが、ボッティチェッリは一体どこで哲学やギリシャ神話の物語および約束事を学んだのか、そしてどんな人物がブレーンだったのかなど絵の解釈や制作年代も含めて研究のタネは尽きないようです。


名画の秘めごと―男と女の愛の美術史

名画の秘めごと―男と女の愛の美術史

  • 作者: 有地 京子
  • 出版社/メーカー: 角川マガジンズ
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本


先日有地京子さん(「名画の秘めごと」の著者)の美術解説セミナーで、ボッティチェッリの「春」や「ヴィーナスの誕生」など、おなじみの名画の知られざる背景を色々聞かせていただきました

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ジョルジョーネ「眠れるヴィーナス」:
ドレスデン美術館蔵

「週刊世界の美術館」09.12.10号より)

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ティツィアーノ「ウルビーノのヴィーナス」:
ウフィツィ美術館蔵
「週刊世界の美術館」09.12.10号より)

この2点のヴィーナス、共通項と相違点は?


このセミナーで、ヴェネツィア派のジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」は、それまでの絵画にみられた宗教画のような物語性を排除し、詩的な美しい風景の中に人間を描く革新をなしたことを知りました。
ジョルジョーネの作品はその後の風俗画や風景画の出発点になったとのことですが、私は
2008年のドイツ旅行で訪れたドレスデン美術館で、「眠れるヴィーナス」の実物を鑑賞しています。


<ドレスデン美術館、その他の必見絵画>

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(フェルメール「手紙を読む女」)
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(フェルメール「取り持ち女」)
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(絵はがき:ラファエロ「サンシストの聖母」)


私的にはフェルメールの二作品をみるのが主目的だったドレスデン美術館ですが、ラファエロの「サンシストの聖母」、ヤン・ファン・エイクの「三連祭壇画」などの宗教画、パルミジャニーノ、コレッジオ、レンブラント、ルーベンスなど特にイタリアおよびフランドルの名画が充実している美の殿堂。

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ドレスデン美術館(古典絵画館)
正面に「サンシストの聖母」のバナーが見える)

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ドレスデン、ツヴィンガー宮殿
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ドレスデン、ポーセリン美術館

旧東ドイツに属していたザクセンの古都ドレスデンには、他にも絢爛豪華な宝飾品を多数展示した「緑の円天井」や、マイセンなど陶磁器のポーセリン美術館もあり、ザクセン公国の栄華がしのばれる素晴らしい体験ができる街です。
最近は、ドレスデンがコースに組み込まれたパッケージツアーも増えていますが、エルベ川クルーズも楽しめるので、特にシニア層にオススメのデスティネーションです。


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古都ドレスデンは”エルベ河畔のフィレンツェ”と詠われる


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名画からファッションの歴史が見える [私的美術紀行]

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(同展チラシより)
ラグジュアリー_0003のコピー.jpg(同展グッズ)

先月東京都現代美術館で開催されていたラグジュアリー;ファッションの欲望という展覧会に行って来ました。娘が友人からもらった招待券をみて初めて知ったファッション展でしたが、20世紀のオートクチュールデザイナーの作品(洋服)を中心に、16世紀から20世紀までの豪奢な服飾美術品を展示した大変興味深いものでした。

“『着飾るということは自分の力を示すこと』というパスカルの言葉は、自らを華やかに飾り立てる人々の欲望の一面を的確にとらえている”と、展示品の解説パンフレット冒頭にも書かれていましたが、『着飾ることは自分の力を示すこと』という展示コーナーはまさに骨董品のような豪華絢爛な衣装が並んでいて圧倒されました。

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18世紀フランスの男性用衣服:生地拡大;同展絵はがきより)

金糸銀糸を用いた物が多かったのですが、中にはイギリスの姉妹用に製作された約5000匹のインドの玉虫を刺繍にしたペアのドレスという珍しい物も展示されていました。女性服が華美なのは当然ですが、男性服も負けずにデコラティブでした。

大量生産のファッション衣料が出回っている現在でも、自分好みに着飾るためにはある程度の財力が必要ですが、織物や縫製技術が今ほど発達していなかった時代には、着飾ることは自らの財力・権力を誇示するために格好なツールであったようです。

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(同展チラシより)

ロココ・ファッションの展示品で、「ローブ・ア・ラ・フランセーズと呼ばれた18世紀の女性服は、技巧を駆使したリヨンの絹織物に過剰な装飾が施された衣服でしたが、この衣服を着用したマネキンは、映画や肖像画で見たマリー・アントワネットのような巨大な髪型でした。これでは馬車に乗るのも一苦労どころか、歩くのもままにならなかったのではないでしょうか。

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マリーアントワネットの肖像:絵はがきより)

マリー・アントワネットは、結髪師が組み立てた軍艦、馬車などを頭上に載せていたそうですが、娘のあまりにも豪奢な衣服や髪型の噂を伝え聞いて、オーストリアの女帝である母マリア・テレジアが、過剰なファッションを諫める手紙を送ってきたことを思い出しました。母の心配は後にフランス革命による処刑という最悪の結果で的中してしまうのですが、断頭台にのぼる前日まで過ごしていたコンシェルジェリー牢獄の中で着ていた簡素な白いドレスは新しい流行のものだったといいます。しかも牢獄でもお針子が雇われ、獄中にあっても貴婦人達は朝昼晩に着替えをしたとか。

ファッションから名画を読む (PHP新書)

ファッションから名画を読む (PHP新書)

  • 作者: 深井 晃子
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2009/02/14
  • メディア: 新書

今回の展示会の企画監修をなさった深井晃子さんは、服飾史家、キューレーターとして有名な方ですが、服飾史と美術史の学際という独自視点による著書を私は以前から愛読していました。

最新刊の「ファッションから名画を読む」では、マリー・アントワネットのエピソードをはじめ、ルネッサンスから19世紀までの絵画を中心にとりあげています。この著作は、“服飾をツールに美術史を読み直す”というものですが、これまでの美術史では見過ごされてきた思いがけない発見もあるので読み応えがあります。

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画家が着ているジャケットは17世紀前半オランダから広まった市民服
フェルメール「絵画芸術の寓意」:絵はがきより)

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クラナハ「ユディト」;
クラナハは当時ザクセンで流行していた
”下着を覗かせるスラッシュ・ファッション”を着せて描いた
絵はがきより)

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(アングルは当時の流行を正確に伝えた肖像画を描いた:
「名画とファッション」より)


名画とファッション (ショトル・ミュージアム)

名画とファッション (ショトル・ミュージアム)

  • 作者: 深井 晃子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 1999/03
  • メディア: 単行本

1999
年に出版された上質紙のカラーグラビア書籍「名画とファッション」は、“名画の魅力をファッションから鑑賞するニュータイプの美術ガイド”なので、堅苦しくなく見ているだけでも楽しめます。

ところで、今回展示されていたシャネルやディオールなど20世紀のオートクチュール・デザイナーによる衣服は、まるで『シネマファッション』を見ているような感じでした。その中で、シャネルのドレスはその時代の“働く女性を意識した服作り”だったからでしょうか、古さを感じさせないセンスで、現代女性の仕事着にはともかくパーティドレスとしては十分に通用しそうに思いました。

私たちが若い頃は、オードリー・ヘップバーンの映画を見て最新のパリ・モードに憧れたものですが、そのパリ・モードを支えたオートクチュールのお針子さん達も今や『絶滅危惧職種』とか。

先日地上波テレビで放送された映画「プラダを着た悪魔」をみましたが、インターネットなどで情報伝播速度が飛躍的に速くなった現在、『シネマファッション』は映画を通して過去のファッションを懐かしむツールになっているのかもしれません。


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名画の背景にあるストーリーを知ると、西洋絵画がもっと身近になる [私的美術紀行]

私はヨーロッパの美術館巡りが大好きですが、美術館巡りや西洋絵画鑑賞の楽しさに開眼したのは、夏休みに家族で出かけた1998年のスペイン旅行でした。

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(マドリード:”太陽の沈まぬ国”スペイン王家栄光の都)

マドリードのプラド美術館の見学は、現地在住のツアーガイドが主要な作品を解説しながら案内したあと、自由時間に好きな作品を鑑賞するようになっていました。

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★ベラスケス「ブレダの開城」:
by「週刊世界の美術館」08.9.4号★


1819
年に開館したプラド美術館は“太陽の沈まぬ国”と称される世界帝国を築いたスペイン・ハプスブルク家のコレクションを中心とする膨大な所蔵品があり、縦横とも3メートルを超えるような大作がずらりと並んでいて度肝を抜かれました。

スペイン絵画留学からそのまま住み着いてしまったというガイドさんの説明は、「裸のマハ」で知られるゴヤの作品に特に力がこもっていました。数あるゴヤの作品の中で私にとって印象的だったのは、威厳ある王族の肖像画というよりも生々しい人間の姿で描かれている「カルロス4世とその家族」という肖像画

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★ゴヤ「カルロス4世とその家族」:
by「迷宮美術館」★


国王を押しのけて中央に立つのは、若い愛人とともに政治の実権を握っていた王妃です。勲章をつけた礼装や豪華な衣装にもかかわらず、堕落し欺瞞に満ちた国王一家の姿をリアルに描かれてしまった王妃の反応は、「そっくりに描かれて、私たちは喜んでいます」というものだったそうです。


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★1656年頃・ベラスケス「ラス・メニーナス」
by「週刊世界の美術館」08.9.4号★


そして、もう1枚とても気になった絵画は、宮廷画家ベラスケスが描いた「ラス・メニーナス」。
主役である5歳くらいのマルガリータ王女がややご機嫌ななめなのか、心配そうに娘を見守る国王夫妻の表情が画面中央奥の鏡に映し出されており、女官などの登場人物や構図がユニークな絵画です。

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ウイーン美術史美術館の絵はがき 
2点の「マルガリータ王女」
1653-54年頃と1659年に描かれた作品


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ルーヴル美術館の「マルガリータ王女」
本年東京で開催の「ルーヴル美術館展」で来日(1654年に描かれた)
by 同展覧会のチラシより★

マルガリータは幼くして、母方の実家であるウイーンのハプスブルク家との婚姻が決まっており、成長の様子がわかる肖像画がベラスケスによって毎年のように描かれてウイーンに送られていたというエピソードをこのとき初めて知りました。その肖像画は、ウイーンの美術館にあるというので、いつかは実物をみたいと思うようになりました。

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★今回の「Theハプスブルク展」で来日する
1656年頃の「白いドレスのマルガリータ王女」:
by「週刊世界の美術館」H12.8.8号★

何点かのマルガリータの肖像画は後年実際にみることが出来ましたが、現在新国立美術館で開催中の「Theハプスブルク展」には、「ラス・メニーナス」と同じ衣装を着ている「白いドレスのマルガレータ王女」という作品が展示されています。髪型や表情がやや大人びて見えるので、「ラス・メニーナス」よりも少し後に描かれたのかもしれません。

それにしても、母方の叔父であり従兄弟にもあたるという超近親者との婚姻を運命づけられ、10代でウイーンに嫁ぎ産まれた子供を次々亡くした末に、産後の肥立ちが悪く22歳で亡くなったというマルガリータだけでなく、スペインとウイーンのハプスブルク家を巡る姻戚関係の歴史には複雑すぎて哀しすぎるストーリーがあまりにもたくさんあります。


さて、プラド美術館鑑賞翌日の自由行動日、ティッセン美術館にもカラヴァッジョの「アレクサンドリアの聖女カタリナ」などたくさんの名画があったのですが、ガイドもなく、何の予備知識もないまま鑑賞したので殆ど何も覚えていないのがとても残念です。

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★ホルバイン「英国王ヘンリー8世の肖像画」:
by「週刊世界の美術館」09.8.6号★

肖像画の名手ホルバインが描いた「英国王ヘンリー8世の肖像画」もティッセンで見たはずなのに記憶がありません。ヘンリー8世といえば6人の王妃との結婚・離婚で有名な“青ひげ王”なのに・・・

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★ホルバイン「イギリス王妃ジェーン・シーモアの肖像」:
by「週刊世界の美術館」H12.3.28号★

先日、ウイーン美術史美術館の所蔵作品をチェックしていたら、同じホルバインによるヘンリー
8世の3番目の王妃だったジェーン・シーモアの肖像画を発見しました。

ジェーン・シーモアが産褥で亡くなったあと、ヘンリー8世の4番目の王妃を巡るエピソードはよく知られていますが、ホルバインはイングランドの宮廷画家になっていたので二人の花嫁候補以外に王妃の肖像画も描いていたわけです。

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★ヘンリー8世のふたりのお妃候補・
クレーフェのアンナ(左)とクリスティーナ:
by「名画の秘めごと」★


“クレーフェのアンナの肖像画”を見て、結婚を決めたヘンリー8世は、実物のアンナと対面して肖像画とのギャップに激怒しつつも国策のために結婚しましたが、アンナとはベッドを共にしないまま半年で離婚して別の女性と結婚します。アンナは“王の義妹”という公の地位と財産を与えられて、そのまま宮中にとどまって幸せに暮らしたそうです。


ホルバインが描いたアンナはそんなに美化されて描かれており、実際のアンナはひどく醜かったのか?


名画の秘めごと―男と女の愛の美術史

名画の秘めごと―男と女の愛の美術史

  • 作者: 有地 京子
  • 出版社/メーカー: 角川マガジンズ
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本

先日私が受講した「ハプスブルク展解説セミナー」の講師、有地京子さんの著書「名画の秘めごとには、そのあたりの逸話や考察などが詳細に書かれています。


たしかに、もう一人の花嫁候補でヘンリー8世が一目惚れしたのに振られた形のデンマーク王女・クリスティーナは若さにあふれ魅力的ですが、アンナは魅力的な美人とはいえなくても聡明な感じです。
それに、ジェーン・シーモアの肖像画をみると、アンナとジェーンはどこか雰囲気が似ているように感じられます

ローマ教皇と対立してローマ・カトリック教会から離脱するなど、大変な思いをしてまで結婚したアン・ブーリンが待望の世継ぎとなる王子を流産した直後に、アンの女官だったジェーンに手をつけたのだからどんな美女かと思ったのに意外でした。


絵画鑑賞は、難しい解説やうんちくを聞くよりも、“好きか嫌いか?”とか“感動できるか否か”など自分の感性のままに楽しめばよいという意見もあるかもしれませんが、私は、名画や描いた画家の歴史的な背景やサイドストーリーなどの知識を頭にいれながら鑑賞するのが好きです

特に西洋絵画は、キリストの生涯や聖書にまつわる話やヨーロッパの国々の歴史に関する知識がないと意味がわからないことも多いので、学生時代にスルーしてきたことを学び直す日々です。

美術館巡りや絵画鑑賞は、 “時間(とき)持ち”のリタイア世代に人気の趣味ですが、もっと楽しむためにも名画の背景に興味をもつお仲間が増えると良いなと思います。



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『皇妃エリザベート』、あの有名な肖像画はいったい何枚あるのか? [私的美術紀行]

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(絵はがき:皇妃エリザベート
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(絵はがき:皇帝夫妻

中世から20世紀初頭まで、645年間もヨーロッパに君臨したハプスブルク家

先月のクロアチア・スロヴェニア旅行もまた、ユリアンアルプスのブレッド湖という意外な場所でハプスブルク家の栄華の名残りを実感する旅となりました。

このブログでも何回かご紹介していますが、私はハプスブルク家の代表的美女といわれる『皇妃エリザベート(愛称シシィ)』の大ファンです。
といいつつ、
2007年の中欧旅行時はまだそれほどよく知らなかったこともあり、ウイーンの王宮で公開されている皇帝夫妻の居室や「シシィミュージアム」よりもシェーンブルン動物園のパンダを優先させてしまいました。シシィに興味を持つようになって資料を色々調べるうちに、どうしても見学してみたいと思うようになったのですが、そんなに簡単に行ける場所ではありません。

(「ハプスブルク展」公式ムック本)
別冊家庭画報 家庭画報特別編集 ~「THEハプスブルク展」 公式MOOK~ハプスブルク家「美の遺産」を旅する

別冊家庭画報 家庭画報特別編集 ~「THEハプスブルク展」 公式MOOK~ハプスブルク家「美の遺産」を旅する

  • 作者: 写真=南川三治郎
  • 出版社/メーカー: 世界文化社
  • 発売日: 2009/09/01
  • メディア: ムック

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皇妃エリザベートの肖像画
上記公式ムック本より)



東京で「ハプスブルク展」が開催され、シシィの肖像画が来日するらしいと知り、せめて有名なあの肖像画の実物が見られるだけでも良いかなと思いました。11月に展覧会の解説セミナーがあるので、美術館には受講後に行くつもりでとりあえず公式ムック本だけ入手しておきました。

旅行直前になり、クロアチアからの帰国便のウイーン乗り継ぎ時間が長く、短時間の滞在ではあってもウイーン市内に行くことは可能だとわかり、思いがけず「シシィミュージアム」行きが実現しました。とはいえ、市内に到着してから空港行きのシャトルバスに乗るまでの時間は70分、王宮までの往復徒歩時間を除けば本当に短時間の“弾丸ツアー”です。

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アウグスティーナ教会:この教会では
マリー・アントワネットも代理人と婚約指輪の交換をした)
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(王宮のミヒャエル門

まず、フランツとエリザベートの結婚式が執り行われた「アウグスティーナ教会」を外から見て、王宮のミヒャエル門に急ぎ、「シシィミュージアム」に入場。

時間がないので、フォルクス庭園にある「シシィ像」はあきらめましたが、いざとなると王宮は広くて、団体客の隙間を走り抜けるようにしての文字通り駆け足見学でした。

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(絵はがき:皇妃エリザベートの肖像画:
自慢の長い髪の手入れは特に入念だった)

「シシィミュージアム」は、皇帝夫妻の居室と、アレクサンドル皇帝の居室と一緒に公開されていますが、チケットは「宮廷銀器コレクション」との共通券になっており、無料のイヤホンガイド付きです。王宮内の22室が展示公開されていますが、室内の写真撮影は禁止です。
展示風景などは書籍や絵はがきでご紹介します。



皇妃エリザベート―永遠の美 (ほたるの本)

皇妃エリザベート―永遠の美 (ほたるの本)

  • 作者: 南川 三治郎
  • 出版社/メーカー: 世界文化社
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本


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(上記書籍によるシシィミュージアムの展示風景)

シシィミュージアム」は、1898年に暗殺されたエリザベートのデスマスクの展示から始まりますが、映像や音楽を駆使し、シシィ神話にまつわる映画などの紹介、少女時代から宮廷生活までの様子など多岐にわたる展示品があり、どれも興味深いのにゆっくり見る時間がなかったのが残念です。その中に、暗殺者が実際に使用した凶器の研ぎすまされたヤスリがあったことにはちょっと驚きました。

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(絵はがき:皇帝夫妻の肖像画が飾られた皇帝の執務室

皇帝フランツ・ヨーゼフ夫妻の居室部分は、13室ありますが、その中の皇帝の執務室は、ウイーンに居ることが少なかったエリザベートの肖像画を見ながら、ワーカーホリックとも思える皇帝が日夜仕事に励んでいた部屋です。
現在、エリザベートと皇帝の肖像画は
2枚並んで展示されています。

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(公式ムック本より)

1865
年にヴィンターハルターが描いた「皇妃エリザベートの肖像」は、既に写真の時代になっていて数多くの写真が残されているにもかかわらず、だれもが思い浮かべる有名な肖像画。

王冠すら戴かずに、流行のドレスに身を包み美しい肩をあらわにした斬新な肖像画を一目見た皇帝は、「本当の皇妃の姿をとらえたポートレイトはこれが初めてだ」と絶賛したと言われています。

今回の「ハプスブルク展」には、この肖像画が来日するというので、
1枚欠けたらどんな展示になっているのかと思いながら部屋に入りましたが、何事もなかったかのようにその絵は皇帝の肖像画と並んでいます。
一瞬、“同じ絵が2枚あったのか?”と思いましたが、考え込んでいる時間はないので先を急ぎ、皇妃の居間兼寝室や化粧室などでエリザベートの“美へのこだわり”の展示品を見て、最後に売店で絵はがきなどを購入し、ダッシュで空港行きのシャトルバス乗り場に向かいました。

さて、先日、「ハプスブルク展」の解説セミナーを受講して、肖像画の謎がさらに深まったので、公式ムック本を熟読し、手持ちの資料などを色々調べました。

結論から言うと、皇帝がヴィンターハルターに制作を発注したのは3、そのうちの2点は私的な性格の肖像画とのこと。だから、日本に1枚貸しても何事もなかったわけです。さすがハプスブルク家の皇帝ともなるとオトナ買いなのですね。

では、この2点の違いは何か?

入手できた画像で見る限り、背景の色味やドレスの陰影、生花に微妙な違いがありそうですが、写真や印刷の影響かもしれません。しかし、絵のサイズと額縁のデザインが2種類あることがわかりました。

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(2000年当時の展示風景:講談社「週刊世界の美術館」H12.8.8号より)

来日したのは、ウイーン家具博物館蔵の絵画で、216×300センチ、額縁は長方形。
王宮の居室に展示されているのは、160×250センチ、額縁は上方に装飾のあるデザインです。
3週間ぶりに肖像画の謎が解けて、スッキリしました。

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3323260(シシィミュージアムのチケット)

ところで、「シシィミュージアム」のチケットなどに印刷されている反対向きの肖像画はデジタル処理?




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「トリノ・エジプト展」・・・イタリア式展示演出法とは? [私的美術紀行]

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連休初日、上野の東京都美術館で開催中の「トリノ・エジプト展」に行ってきました

古代エジプト・マニアとまではいえないけれど、それなりに世界各地で出土品などのコレクションをみたりしている私も、イタリアにエジプト博物館があるとは思いもしませんでした。

トリノといえば、前回の冬季五輪開催地で自動車産業の町、そしてサッカー・セリエAの強豪ユヴェントスの本拠地というぐらいの知識でした。そのトリノに、カイロ・エジプト博物館、ロンドンの大英博物館、パリのルーヴル美術館、ベルリン・エジプト博物館、ニューヨーク・メトロポリタン美術館などと並ぶような世界屈指のエジプト・コレクションがあったとは・・・

今回は、殆ど予習せずに会場に向かったのですが、現地トリノでは、照明と鏡を駆使した彫像ギャラリーの演出が注目を集めているとか。

さて、会場に到着。入り口では思ったより空いているように思ったのもつかの間、いきなりの大渋滞。展示物が小さく、説明ボードの文字数が多いので、列がなかなか進まないようです。

展示は、5つの章に分かれていますが、私の印象に残った展示物などについて資料を参考に感想などを書いてみました。

◆第1章 トリノ・エジプト博物館:

コレクションの歴史は古く、17世紀の前半まで遡るといわれていますが、19世紀には、ナポレオンのエジプト遠征に従軍し、フランスのエジプト総領事となったベルナルディーノ・ドロヴェッティがエジプトで収集したコレクションが、サルディーニャ王国に購入されたものが中核となっているそうです。

★『トトメス3世のシリア遠征パピルス』は、紀元前1186~1070年頃の新王国第20王朝時代の文学パピルス。パピルスが書かれたよりも300年ほど前の戦いを精神的に描写したものとのことですが、この時代のエジプトには、ノンフィクション文学が既に存在していたというのは驚きです。

◆第2章 彫像ギャラリー:

3199579(絵はがき)

★今回の目玉はなんといっても、『アメン神とツタンカーメン王の像』でしょう。

古代エジプト史から抹殺された『少年王・ツタンカーメン』は古代エジプトの世界へ誘うメジャーなキーワード。カイロのエジプト考古学博物館にある黄金のマスクの豪華なイメージとは対照的にシンプルな彫像ですが、アメン神の背中に回した右手が少年王の雰囲気を表しているように思える作品でした。

★『イビの石製人型棺の蓋』は、堅い石なのにとても細かく彫り込まれていることに驚かされます。
第1章で、古代エジプト人たちが使った鑿や木槌などの道具が展示されていますが、それにしてもその彫刻の技術レベルはすご過ぎます。

★『ライオン頭のセクメト女神像』は頭に太陽日輪を戴くライオン頭の女神。
夫である『ブタハ神』は、座像で見る限り普通の人間ぽい感じなのに、なぜ妻はライオン頭なのか?素朴な疑問です。

◆第3章 祈りの軌跡:

古代エジプト人が非常に信心深かったことはよく知られています。

あまりにもたくさんの神々の名前がでてくるので私にはとても覚えられません。

3199580(絵はがき)

★『ナキィの葬送用ステラ』は、紀元前1333年~1213年頃の石碑ですが、彩色されていてまるで絵巻物をみるような作品です。

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★『青銅製の猫の小像も副葬品だったのでしょうか。おしゃれなオブジェにみえます。

◆第4章 死者の旅立ち:

「人は誰でも死んでオシリス神となって、死後に再生・復活する」というオシリス神信仰が人気を集め、死後に再生するために遺体を保存するミイラ作りが広まったとのこと。

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★『ニィアのシャプティ・ボックス』は、遺体とともに墓に埋葬される副葬品として、召使いとして死者に奉仕する役割のシャプティ像を納める箱。
アメン大神殿の神官であったニィアが、西方の女神を伴ったオシリス神に、香と神酒を捧げる場面が描かれています。

第5章 再生への扉:

古代エジプトでは、再生と復活を信じて墓が造られ、遺体をミイラにして手厚く葬りました。死後、確実に再生するために色々な種類の護符がミイラととともに埋葬されたそうです。護符のついた首飾りも展示されていました。

3199583(絵はがき)

★『ロータス文様のファイアンス製容器』の、あまりにも美しいブルーに魅了されました。
夜になると花びらを閉じて水面下に沈み、夜明けとともに花を開くロータスは古代エジプトでは、再生の象徴になっていたようです。

★『葬送用模型船』は、魔法の力で、アビュドスにあるオシリス神の聖地へと死者を運ぶ船とのこと。
この模型船には、何体もの人形が乗っており、天国への乗り合い船といった趣ですが、古代エジプト人の再生への執着を改めて感じる展示品でした。

これまで私が行ったことのある、大英博物館もルーヴルやメトロポリタンでも、古代エジプト関係の展示室は広くて明るい部屋が多かったような気がします。館内には他にも見たい展示品がたくさんあるので、いつも古代エジプトものはさくさく見ていましたが、今回はゆっくり説明ボードを読みながら見学しました。

部屋を暗くして照明で浮かび上がらせる方式は、古代遺跡からの発掘品というより、アートに見えてくるのが不思議ですね。
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パリのルーヴルで見逃した名画を、東京で鑑賞するぜいたく [私的美術紀行]

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(大晦日のルーヴル美術館は、人・人・人・・・)

私はヨーロッパ旅行に行って美術館めぐりをするのが大好きですが、東京に居ながらにして海外の名画を楽しめる美術展にもよく出かけます。

現在、東京ではふたつの「ルーヴル美術館展」が開催されていますが、「17世紀のヨーロッパ絵画」というサブタイトルの国立西洋美術館(上野)の展示作品解説セミナーに行ってきました

“解説を聞いてから作品を見るか? 作品を見てから解説を聞くか?”

最近は会場で貸し出される『イヤホンガイド』というサービスもありますが、私は、予習してから出かけるのが好みです。
今回のルーヴル展のチラシによると、“フェルメールの名作『レースを編む女』をはじめ、レンブラント、ルーベンス、ラ・トゥールなど、日本初公開作品約
60点を含む71点の傑作が集結。これぞルーヴル、これぞヨーロッパ絵画の王道”との触れ込みです。

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(フェルメール晩年の作品
『レースを編む女』)

たしかに、チラシで紹介されている画家は、西洋美術史上不可欠の画家ですが、大作ぞろいのルーヴル美術館にあっては、うっかり見逃しがちな作品が選ばれているようにも感じます。30点あまりは初めてルーヴルを出る作品ということですが、日本人にとってなじみの薄い画家の作品もあるようです。実は、私が「見たことがある」とはっきり言い切れる作品は、昨年の大晦日に見たフェルメールの『レースを編む女』だけです。
(この数年、絵画鑑賞のガイドブックを読みすぎて、実際に美術館で鑑賞したのか、書籍で見ただけなのか自分でもわからなくなってしまった作品も・・・)

しかし、セミナー講師の有地京子さんの解説を聞くうちに自分が見逃していた作品にも素晴らしい作品があるということがわかりました。
特に、フランスバロックの3人の画家、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(『大工の聖ヨセフ』)、ル・ナン兄弟(『農民の家族』)、クロード・ロラン(『クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス』が個人的に楽しみな作品です。

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西洋絵画史 WHO’S WHOより、ラ・トゥールの作品
左上:今回展示される『大工の聖ヨセフ』
右上:『二つの炎のあるマグダラのマリア』
左下:『いかさま師』)


この中で、ラ・トゥールの『大工の聖ヨセフ』は、ニューヨークのメトロポリタン美術館で見た『二つの炎のあるマグダラのマリア』と同じく、蝋燭などの光を効果的に用いた精神性の高い宗教画の傑作。しかし、ルーヴルで私の記憶に残っていたのは、美術館のガイドマップでも紹介されていた『いかさま師』のみ。そして、ル・ナン兄弟は私にとっては初めて出会う画家。

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「西洋絵画史 WHO’S WHOより、
ル・ナン兄弟:『農民の家族』)
2729513
「西洋絵画史 WHO’S WHOより、クロード・ロラン
:右下が『クリュセイスを父親のもとに返すオデュッセウス』


今回、西洋美術館に出かけたら、ルーヴルで見逃していた名画をゆっくり鑑賞しなくては・・・

◆絵画鑑賞ガイドブックとして、「週刊 世界の美術館」(講談社)や「週刊 西洋絵画の巨匠」(小学館)は、図版も大きいので読み物としても楽しめますが、手元に置いて重宝しているのは、「西洋絵画史 
WHO’S WHO」。

西洋絵画史WHO’S WHO―カラー版

西洋絵画史WHO’S WHO―カラー版

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 1996/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

西洋美術史上不可欠な画家など
281人の作品、総計936点をオールカラーで紹介し、ポイントを簡潔に解説しているので、気になる画家や絵画があったときに役立ちます。

最近、名画の秘密を紐解く本が色々出版されていますが、今回のセミナー講師である有地京子さんの著書「名画の秘め事」もお勧めです。

名画の秘めごと―男と女の愛の美術史

名画の秘めごと―男と女の愛の美術史

  • 作者: 有地 京子
  • 出版社/メーカー: 角川マガジンズ
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本

この本では、名画の解説にとどまらず、画家の人生ドラマなど様々なエピソードが紹介されているので、名画に映し出された画家の内面性を知ることで、絵画鑑賞の楽しみが広がると思います。
ルーヴル展で「自画像」が展示されているレンブラントは、自分の絵のモチーフになるものには惜しみない浪費をしたため、豪邸の支払ができず事実上破産。
昨年ドレスデン国立絵画館で見た『居酒屋の放蕩息子』の顔がレンブラントにそっくりだった理由が、このエピソードでわかりました。

 


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ドレスデンとベルリンで、フェルメールの珠玉の名画と対面・・・私的美術紀行 [私的美術紀行]

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(ドレスデン:エルベ川からの眺望)
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(フラウエン教会復興の物語は日本でも話題になった)
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(ドレスデン城「君主の行列」)

9月のドイツ旅行で、私は、旧東ドイツに属し、“エルベのフィレンツェ”と呼ばれるドレスデンとベルリンでフェルメールの絵画をそれぞれ2点ずつ所蔵する美術館を見学しました。
これまで海外旅行時に訪れた有名美術館でお目当ての作品が貸し出し中だったり展示替えで鑑賞できなかったりする不運が何回かありましたが、今回は無事に4点を鑑賞することができました。

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(ツヴィンガー宮殿)
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(アルテマイスターとアウグスト強王)

フェルメールの作品は、ドレスデンではザクセンの栄華を象徴するツヴィンガー宮殿の絵画館・アルテマイスターに展示されています。

絵画館の所蔵品は、1690年代から1760年代にかけて、ザクセン公国選定候アウグスト強王とその息子のフリードリッヒ・アウグスト2世が蒐集した16世紀から17世紀の作品が中心のコレクションですが、戦利品などではなく、殆ど市場で買い集めたと言われています。
絵画館は、戦争が本格化した
1938年に閉館し、その作品は国内各所に分散保管されましたが、戦後ソ連軍によってモスクワに持ち出されてしまいました。その中には、フェルメールの2作品「取り持ち女」と「窓辺で手紙を読む女」や、ラファエロの「システィーナのマドンナ」、レンブラントの「ガニュメデスの誘拐」なども含まれていました。絵の一部は10年後に東ドイツに返還されましたが、いまだに失われたままの作品も多いそうです。戦後60年が経過しても戦争の傷跡がいまだ解決していないことがここにもありました。

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(フェルメール「取り持ち女」)

1958
年に再オープンしたアルテマイスターですが、現在の建物は19世紀半ばにゴットフリート・ゼンパーによって設計されたものです。
写真撮影が特に禁止されていなかったのでフェルメールの絵画を自分のカメラに納めることが出来ましたが、「取り持ち女」は、今まで私が見たフェルメール作品とはずいぶん趣が異なります。フェルメール作品の多くは一般的に「風俗画」として分類されますが、それにしてもこのようなテーマの絵画を購入した所有者はこの絵を自宅に飾ったのでしょうか。

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「窓辺で手紙を読む女」は、憂いをおびた女性の表情から推し量るに手紙の内容が余りよい知らせにはみえません。女性の内面が伝わるような絵画なので私にはいかにもフェルメールらしい作品と見えましたが、購入された1742年の時点ではレンブラントの作品と思われていたとか。

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(陶磁器コレクションは圧倒的スケール)

アルテマイスターでラファエロなどイタリア絵画やレンブラントの名画を鑑賞したあと、これもザクセンの至宝のひとつ、2万点という膨大な陶磁器コレクションを堪能してすっかり疲れた私と娘は、戦争で爆撃され瓦礫の山となった教会建物の感動的な再建ストーリーが、日本でも話題になったフラウエン教会隣のカフェレストランでランチタイム。

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(フラウエン教会は、瓦礫の山から拾い集めた資材を使って再建)

宮殿にも近いコーゼルパレイという店は、アウグスト強王が愛人コーゼル伯爵夫人の息子のために建てた貴族の館を利用したものです。

ひと休みしたのち、ドレスデン城の「緑の丸天井」と呼ばれる宝飾館で、豪華で精密な金細工などを見学した私たちは、翌日、統一ドイツの首都、美術都市として再生したベルリンに移動しました。

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(旧西ベルリンの中心地区:1943年の爆撃の姿が保存されているカイザー・ヴィルヘルム記念教会

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(ベルリンの文化フォーラムにある「国立美術館」)

ベルリンの壁により、長年東西に分かれていたヨーロッパ絵画コレクションはドイツの再統一後大々的な統合・整理・改修が行われましたが、18世紀までの絵画は新築された国立美術館で展示されるようになりました。フェルメールの「真珠の首飾り」と「紳士とワインを飲む女」は、この美術館で鑑賞したのですが、ドレスデンよりも警備が厳しく写真は撮影できませんでした。

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(絵はがき:「真珠の首飾り」)

真珠の首飾り」の若い女性は、他の作品にも何度か登場する白い毛皮がついた黄色いガウンのようなジャケットを着ています。これはフェルメールの時代に流行したファッションなのでしょうか。
また、フェルメールの絵は謎が多いと言われる様に、若い女性が首飾りをつけた自分の姿を鏡で見ているという構図にしては、鏡が小さくてよく見えないのではないか?という意見もあります。

フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版) (集英社新書ヴィジュアル版)

フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版)
作者: 朽木 ゆり子

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/09/15
  • メディア: 新書


朽木ゆり子さんの著書「フェルメール全点踏破の旅」は、これら作品にまつわるエピソードなどの他に、作品を所蔵している美術館の歴史にも言及しているので私はとても興味深く読みました。

さて、現在上野の東京都美術館では「フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち」が開催中ですが、7点出展されているフェルメールの作品のうち6点は私が初めてお目にかかる作品といううれしい企画。なかなかスケジュールが合わなかった私と娘も近日中に上野まで出かける予定です。


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