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「トリノ・エジプト展」・・・イタリア式展示演出法とは? [私的美術紀行]

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連休初日、上野の東京都美術館で開催中の「トリノ・エジプト展」に行ってきました

古代エジプト・マニアとまではいえないけれど、それなりに世界各地で出土品などのコレクションをみたりしている私も、イタリアにエジプト博物館があるとは思いもしませんでした。

トリノといえば、前回の冬季五輪開催地で自動車産業の町、そしてサッカー・セリエAの強豪ユヴェントスの本拠地というぐらいの知識でした。そのトリノに、カイロ・エジプト博物館、ロンドンの大英博物館、パリのルーヴル美術館、ベルリン・エジプト博物館、ニューヨーク・メトロポリタン美術館などと並ぶような世界屈指のエジプト・コレクションがあったとは・・・

今回は、殆ど予習せずに会場に向かったのですが、現地トリノでは、照明と鏡を駆使した彫像ギャラリーの演出が注目を集めているとか。

さて、会場に到着。入り口では思ったより空いているように思ったのもつかの間、いきなりの大渋滞。展示物が小さく、説明ボードの文字数が多いので、列がなかなか進まないようです。

展示は、5つの章に分かれていますが、私の印象に残った展示物などについて資料を参考に感想などを書いてみました。

◆第1章 トリノ・エジプト博物館:

コレクションの歴史は古く、17世紀の前半まで遡るといわれていますが、19世紀には、ナポレオンのエジプト遠征に従軍し、フランスのエジプト総領事となったベルナルディーノ・ドロヴェッティがエジプトで収集したコレクションが、サルディーニャ王国に購入されたものが中核となっているそうです。

★『トトメス3世のシリア遠征パピルス』は、紀元前1186~1070年頃の新王国第20王朝時代の文学パピルス。パピルスが書かれたよりも300年ほど前の戦いを精神的に描写したものとのことですが、この時代のエジプトには、ノンフィクション文学が既に存在していたというのは驚きです。

◆第2章 彫像ギャラリー:

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★今回の目玉はなんといっても、『アメン神とツタンカーメン王の像』でしょう。

古代エジプト史から抹殺された『少年王・ツタンカーメン』は古代エジプトの世界へ誘うメジャーなキーワード。カイロのエジプト考古学博物館にある黄金のマスクの豪華なイメージとは対照的にシンプルな彫像ですが、アメン神の背中に回した右手が少年王の雰囲気を表しているように思える作品でした。

★『イビの石製人型棺の蓋』は、堅い石なのにとても細かく彫り込まれていることに驚かされます。
第1章で、古代エジプト人たちが使った鑿や木槌などの道具が展示されていますが、それにしてもその彫刻の技術レベルはすご過ぎます。

★『ライオン頭のセクメト女神像』は頭に太陽日輪を戴くライオン頭の女神。
夫である『ブタハ神』は、座像で見る限り普通の人間ぽい感じなのに、なぜ妻はライオン頭なのか?素朴な疑問です。

◆第3章 祈りの軌跡:

古代エジプト人が非常に信心深かったことはよく知られています。

あまりにもたくさんの神々の名前がでてくるので私にはとても覚えられません。

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★『ナキィの葬送用ステラ』は、紀元前1333年~1213年頃の石碑ですが、彩色されていてまるで絵巻物をみるような作品です。

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★『青銅製の猫の小像も副葬品だったのでしょうか。おしゃれなオブジェにみえます。

◆第4章 死者の旅立ち:

「人は誰でも死んでオシリス神となって、死後に再生・復活する」というオシリス神信仰が人気を集め、死後に再生するために遺体を保存するミイラ作りが広まったとのこと。

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★『ニィアのシャプティ・ボックス』は、遺体とともに墓に埋葬される副葬品として、召使いとして死者に奉仕する役割のシャプティ像を納める箱。
アメン大神殿の神官であったニィアが、西方の女神を伴ったオシリス神に、香と神酒を捧げる場面が描かれています。

第5章 再生への扉:

古代エジプトでは、再生と復活を信じて墓が造られ、遺体をミイラにして手厚く葬りました。死後、確実に再生するために色々な種類の護符がミイラととともに埋葬されたそうです。護符のついた首飾りも展示されていました。

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★『ロータス文様のファイアンス製容器』の、あまりにも美しいブルーに魅了されました。
夜になると花びらを閉じて水面下に沈み、夜明けとともに花を開くロータスは古代エジプトでは、再生の象徴になっていたようです。

★『葬送用模型船』は、魔法の力で、アビュドスにあるオシリス神の聖地へと死者を運ぶ船とのこと。
この模型船には、何体もの人形が乗っており、天国への乗り合い船といった趣ですが、古代エジプト人の再生への執着を改めて感じる展示品でした。

これまで私が行ったことのある、大英博物館もルーヴルやメトロポリタンでも、古代エジプト関係の展示室は広くて明るい部屋が多かったような気がします。館内には他にも見たい展示品がたくさんあるので、いつも古代エジプトものはさくさく見ていましたが、今回はゆっくり説明ボードを読みながら見学しました。

部屋を暗くして照明で浮かび上がらせる方式は、古代遺跡からの発掘品というより、アートに見えてくるのが不思議ですね。
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