ボストン美術館展を鑑賞・・・2010年の東京は、印象派・ポスト印象派展の当たり年 [私的美術紀行]
(ボストン美術館展のチラシより)
★ゴッホは「オーヴェールの家々」を描いた1890年に亡くなった★
GWのさなか、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催中の「ボストン美術館展」に行ってきました。
連休前に九州旅行に出かけたのでGWは遠出を自粛して自宅に籠もっていたものの、雨の4月とは様変わりの好天気に思わず家を飛び出してしまいました。
しかし都心も人出が多く、チケットを購入して52階のギャラリー入口に辿り着くまで20分以上かかり、大混雑の会場内で人混みを掻き分けて名画のタイトルと解説ボードを読むのもひと苦労でした。リタイア生活の私ひとりで鑑賞するなら連休のさなかには行かないのですが、ボストン美術館は10年前、まだ大学生だった娘と一緒に訪ねているので混雑を承知で決行したのでした。
(ボストン美術館展のチラシより)
★レンブラントに、高額の制作費でほぼ等身大の2点1対の全身肖像画を発注したのはアムステルダムの上流市民:
この作品が描かれた1934年、レンブラントは名門の令嬢サスキアと結婚して大豪邸に住むようになった★
今回は、世界屈指の美の殿堂ボストン美術館が誇るヨーロッパ絵画コレクションから、16~20世紀の選りすぐりの油彩画80点が、肖像、宗教、日常生活、風景、静物など8つのテーマに分けて展示されていましたが、“確かにボストンで見たことがある”と確信できた作品はそんなに多くありませんでした。
あの時は、美術館巡りの初心者だったとはいえ、美術館のガイドブックで予習してから鑑賞したはずなのに、記憶力の低下なのか、もともとキャパが少ないのか・・・・・・
(ボストン美術館展のチラシより)
ボストン美術館は、世界有数のモネ・コレクションで有名ですが、今回は風景画10点を含む11点が来日。増改築工事期間中の貸し出しだから実現した品揃えといえるでしょう。
(「ルノワール展」チラシより)
ボストン美術館は、4月まで六本木の国立新美術館、現在大阪で巡回展を開催中の「ルノワール展」の目玉作品「ブージヴァルのダンス」も日本へ貸し出し中です。
国立新美術館では、「ルノワール展」に引き続き、5月26日からは「オルセー美術館展2010―ポスト印象派展」、10月には「没後120年 ゴッホ展」が予定されています。
実は、今年はボストン美術館だけでなくパリのオルセー美術館も1986年の開館以来初となる大規模な改修工事中。改修費用をまかなう目的もあって、主要な作品を海外に貸し出ししています。中でも、印象派・ポスト印象派の作品の人気が高い日本市場は、海外の美術館にとっておいしい貸出先なのかもしれません。
(「マネとモダン・パリ」展チラシより)
オルセー美術館とボストン美術館は、4月、丸の内に開館した「三菱一号館美術館」の開館記念展「マネとモダン・パリ」展にも核となる作品を貸し出しています。
国立新美術館で20007年に開催した「大回顧展モネ」には同館最多記録の70万人が入場し、今年4月までの「ルノワール展」も33万人を集めて4位になっています。
なぜ、日本では、印象派・ポスト印象派の人気が特に高いのでしょうか?
今では美術館巡りや絵画鑑賞が趣味と公言している私も、美術史や画家の生きた時代やテーマ、作品が描かれた背景などに関する知識が乏しかった頃に鑑賞した印象派より前の名画の理解は表面的でした。もう一度鑑賞することができるならば、自分にとって興味深い発見があるかもしれないのにと思うことがしばしばあります。特に西洋絵画鑑賞に避けて通れない聖書の名場面やギリシャ神話に対する知識は私に限らず多くの日本人に共通する弱点と思われます。
その点、予備知識がなくても自然体で気軽に鑑賞できる印象派やポスト印象派は日本人向きの作品が多い
といえましょう。大量動員が見込める印象派・ポスト印象派の展覧会は、美術館と展覧会を共催する新聞社やテレビ局にとっても魅力あるコンテンツということで、今年のように企画が目白押しという現象がおきるのでしょう。
印象派・ポスト印象派関連の展覧会は、京橋のブリヂストン美術館でも「印象派はお好きですか?」を開催中。今年9月には「ドガ展」が横浜美術館で開催予定です。
私の絵画鑑賞の原点は、小学生時代に見たルノワールの絵でした。鑑賞眼は一流の作品を見ることで養われるのですから、西洋絵画好きでなくても名作揃いのこの機会に美術館へ足を運び実物を間近に鑑賞してはいかがでしょうか。
★ボストン美術館展の絵はがきより★
モネ「庭のカミーユ・モネと子供」(1875年)
中産階級の心温まる家庭像を表していますが、この作品が描かれた1875年、モネの長男は8歳で次男はまだ生まれていませんでした。
モネ「アルジャントゥイユの雪」(1874年頃)
モネと妻のカミーユと幼い息子は1871年末に、パリまで鉄道で10キロほど、南に1区画ほど歩けばセーヌ川の岸辺に至ると言う魅力的な立地のアルジャントゥイユに居を構えました。
モネ「ジヴェルニー近郊のセーヌ川の朝」(1897年)
1883年、ジヴェルニーの広大な敷地を持つ借家に移り住んだモネは、1890年それまで借りていた土地と家を正式に購入して庭園の造成に情熱を傾けるようになりました。
この作品が描かれた場所は、ジヴェルニーのモネ邸を流れるリュ川に繋がるエプト川がセーヌ川と合流する地点で、モネはそこにアトリエ代わりの平底船を停泊させていました。
モネは、場所を厳密に固定し、時間も日の出前後のごく限られた時間帯にしぼって、同一主題の作品を複数制作したようです。
セザンヌ「池」(1877-79年頃)
印象派より革新的な作品を描いたセザンヌが評価され始めるのは50歳過ぎ。セザンヌは厳格な父の経済的援助を得るため、内縁の妻と子ども(1972年生まれ)の存在を父には隠し通したといいます。この作品が描かれた1877-79年頃、セザンヌは妻子のいるパリと実家のあるエクサン・プロヴァンスを行ったり来たりしていました。そんなエピソードを知ると、この作品はセザンヌが思い描く“休日の家族風景”にもみえてきます。
- 作者: 有地 京子
- 出版社/メーカー: 角川マガジンズ
- 発売日: 2008/06
- メディア: 単行本
◆西洋絵画の知識をもっと深めたいと思われる方には、私もしばしば受講している有地京子先生の美術解説セミナーをおすすめします。
先生の著書「名画の秘めごと―男と女の愛の美術史」は、大胆なタイトルにちょっとびっくりしますが、私も食わず嫌いだったギリシャ神話が楽しく勉強できる読み物です。
もちろんギリシャ神話だけでなく、画家の知られざる素顔などのエピソードがたくさん紹介されているので、絵画鑑賞の楽しみが増えると思います。
スペイン国立プラド美術館所蔵のエル・グレコ作「聖母戴冠」
が長崎県立美術館で日本初となる展示が始まっています。
近いうち、見に行けたらなァと思っています。
by akihiro-s (2010-05-08 12:42)
ご訪問ありがとうございます。
私もエル・グレコは好きな画家のひとりです。
10年以上前、プラド美術館に行ったときにこの作品を見ているはずなのですが、記憶が定かではありません。
今回の企画は長崎という場所にふさわしい展示作品だと思います。
東京に住んでいると、名画の企画展が多過ぎてとても全部は見ることができないという贅沢な悩みがあります。
でも地方在住の場合は、なかなか機会がないかもしれませんね。ぜひ作品を間近でお楽しみください。
by ジョージ (2010-05-08 22:55)
20年位前に、ボストン美術館に行きました...
by サンフランシスコ人 (2013-06-11 06:01)