戦火をくぐり抜けた逸品絵画と金銀財宝コレクション・・・・ザクセンの栄華が甦る古都の旅② [私的美術紀行]
★ツヴィンガー宮殿の中庭★
「陶磁器コレクション」展示室(長廊館内)と、宝物コレクション展示室「緑の丸天井」があるドレスデン城(右奧の塔のある建物)
★陶磁器コレクション 展示室★
ツヴィンガー宮殿内の「ドレスデン絵画館」でヨーロッパ絵画の傑作を堪能した私と娘は、同じ宮殿内にある「陶磁器コレクション」を見に行きました。アウグスト強王が集めた中国や日本の陶磁器、マイセン磁器などを展示する世界最大級(2番目?)のコレクションです。
★東洋磁器コレクションの回廊★
Photo by ドレスデンガイドブック
染め付けの東洋磁器の中には、アウグストがこれを所蔵したいが為にザクセン軍の軽騎兵600人を売り手であったプロイセン王フリードリヒ・ウイルヘルム1世に委ねたというエピソードの「軽騎兵の花瓶」もあります。
マイセンといえばヨーロッパの王室や上流階級の人々から愛され続けている磁器の名門ですが、17世紀、オランダの東インド会社によって中国の五彩磁器や日本の伊万里焼など東洋の磁器がヨーロッパにもたらされた時のヨーロッパには地厚な陶器しかなかったのです。
薄くて透明感のある東洋の磁器に魅了されたヨーロッパの人々の中でも熱狂的なコレクターだったザクセン選定公アウグスト強王は自国での磁器製造に情熱をそそぎ、1708年ドレスデンでヨーロッパ初の磁器が誕生し、1710年からドレスデンの北西にあるマイセンで製作されるようになったとのこと。
★聖母子像★
1732年にマイセンで製作されたもの
★白磁の「キリストの磔刑」★
磁器で作った実物大の動物や人物、王侯貴族のリビングや食堂を飾るような大作が数多く展示されていたが、キリスト像やマリア像など礼拝用の置物も目立った。
★民族衣装で歌い、踊る人々★
陽当たりがよくかなり温度が高くなっている展示室で、地震大国の日本人としては展示するのがためらわれるような繊細な磁器のコレクションの数々に圧倒された私と娘は、ひとまずツヴィンガー宮殿を退去しました。
ランチ休憩後、ドレスデン城の「緑の丸天井」に王家の財宝鑑賞に出かけることにしました。
戦争で大打撃を受けたドレスデン城は1989年から再建が開始され、宝物展示室も別の場所に移っていましたが、2006年に元の場所に復元されています。
ネオ・ルネッサンス様式のドレスデン城の外壁全長約100メートルにわたって、歴代のザクセン君主が描かれた壮大な壁画「君主の行列」があります。
★君主の行列★
アウグスト強王(真ん中馬上の人物)が25000枚のマイセン磁器タイルで作らせたもの奇跡的に戦火を免れた大壁画がザクセンの栄華を今に伝える。
さて、ようやく入口を探し当てて入場したドレスデン城の宝物展示室「緑の丸天井」には、新旧ふたつの展示室がありますが、私たちは「新しい緑の丸天井」を見学しました。(宝物室内は見学者の人数が制限されており、「歴史的な緑の丸天井」は予約制)
豪華で精密な金細工や宝飾品が飾られている展示室内は撮影禁止なので、現地で入手した絵はがきやガイドブックの写真でその雰囲気だけご紹介します。
★ディンリンガー作「金塗りのコーヒーセット」★
★同「インド、デリーの王国」★
★同上拡大図★
最も有名な作品で、金製・彩色エナメルの像137体、5千を越えるダイヤモンド、ルビー、エメラルド、真珠などがちりばめられ、製作には莫大な費用がかけられた。
同じ作者の手による有名な神話を題材にした作品「女神ダイアナの入浴」も展示されている。
細工品がたくさん展示されていましたが、宝石部門には、欠品なしにそろった「ユヴェーレン・ガルニトゥーア(宝石セット)」全9セットという貴重なものもありました。
展示されている作品には目を凝らして鑑賞すべき作品が多々あり、体格においてはるかに優る欧米人観光客(多くはシニア層)の中で鑑賞するのはとても重労働でした。
ものすごくたくさんの宝物を展示してあったのですが、ガイドブックによると展示されているのは所蔵品の半分くらいというのでコレクションのスケールの大きさに驚かされます。
この絵はがきの写真は1945年のドレスデンです。
1945年2月の大空襲で壊滅的な破壊を受けましたが、「史上最大のジグソーパズル」として話題になった「フラウエン教会」に代表される”困難に立ち向かう長期にわたるねばり強い復元工事”で、往時の優雅な街が甦っています。
東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の「美しい街や村」の一日も早い復興を心からお祈りいたします。