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『謎解き』挑戦も楽しいフェルメール鑑賞・・・・マウリッツハイス美術館展 [私的美術紀行]

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現在、上野の東京都美術館で開催中の「マウリッツハイス美術館展」に行ってきました。

午前中の混雑を避け、平日の遅い午後に出かけたので比較的落ち着いた環境で鑑賞することができました。

17世紀オランダ絵画の名作が並ぶ中で、念願だった「真珠の耳飾りの少女」をゆっくり観ることができたので大満足です。

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フェルメールは、その生涯にも謎が多いといわれていますが、現存している作品数が30数点と寡作にもかかわらず研究者により真偽の評価が分かれる作品があります。

また、作品を観る者が様々な解釈をできる要素も多く、『謎解き』挑戦は私にとってフェルメール作品鑑賞のお楽しみのひとつです。


“フェルメールはたびたび、作品の主題について手がかりを残す一方で、
読み解きやすい人物や小物などの説明的な要素を省いた。

その結果、作品に謎めいた印象を与え、絵画が何を伝えようとしているのか、
観る者が思いを巡らせるように誘う。

「真珠の耳飾りの少女」は、今日フェルメールの最も有名な作品だ。
この少女には私たちを魅了する何かがある。(中略)


少女の視線はまるで、私たちに彼女の物語を想像するように求めているかのようだ”

(展覧会公式ミニリーフレット マウリッツハイス美術館長のメッセージより)


さて、今回来日している「真珠の耳飾りの少女」と「ディアナとニンフたち」は、
1984年に東京などで開催された「マウリッツハイス王立美術館展」でも一緒に出品されていますが、どちらも近年の修復作業により新発見があった作品です。

残念ながら私は前回の来日時は実際に鑑賞していないのですが、絵はがきなどでもその違いを確認することができます。



★フェルメール「真珠の耳飾りの少女」★

1665-66年頃:マウリッツハイス美術館蔵)

1902年にハーグの資産家コレクター、デス・トンプから遺贈された作品だが、デス・トンプは1881年にこの絵をオークションでわずか2ギルダー30セントという安値で購入した。

100
年以上前と貨幣価値をにわかに比べにくいが、2002年、オランダにユーロが導入されたときの交換レートにすると約1ユーロ。
なぜ、こんな安値で取引されたのか?


(修復前)
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朽木ゆり子氏の著書*によると、この絵の保管状態が非常に悪く、誰も競りに参加しなかったからではないかという。

マウリッツハイス美術館の主任修復士ヨルゲン・ワドム氏が1994年から翌年までかかった洗浄修復では、口唇に浮かぶさまざまな情報が顕在化した。

修復前は、少女の顔色もニスが黄色っぽくなり、口角の白い点は傷と考えられ塗りつぶされていたが、若い女性の口唇に特有な瑞々しい潤いが蘇った

(現在)
コピー絵はがき耳飾りの少女.jpg


特に向かって右の口角に白く輝く反射光の発見、口唇中央の微細なハイライトの点描の筆致がはっきりした。
鋭く突き刺すような冷たいまなざしと対照的に、何かをいいかけて薄く開いた小さな口許のなまめかしさ・・・・


★フェルメール「ディアナとニンフたち」★

1653-54年頃:マウリッツハイス美術館蔵)

オランダ政府が1876年に購入したときは、ニコラス・マースの作品として購入。
しかし、その後それが偽の署名であることがわかり、その下からフェルメールの署名が現れた。

当時のマウリッツハイス美術館長がフェルメール初期の作品と認定したが、小林頼子氏のようにフェルメールの作と認めない専門家もいる。


(修復前)

修復前フェルメールのコピー.jpg
(Photo by 朽木ゆり子「フェルメール全点踏破の旅」*)

1999年から翌年にかけての修復作業で、絵の右上にあった青空が19世紀に追加されたものだとわかり取り除かれた。

(現在)

コピーディアナとニンフたち.jpg

その下から出てきたのが現在のような黒い背景。

昼間の情景→夜の情景に・・・・

ディアナは狩りの女神で月の神でもあり、純潔の象徴で、ディアナとニンフを主題にした絵画作品は数多い。
お供のニンフたちは半裸体の背中を見せている一人を除き着衣というのが慎ましい?


フェルメールのビッグ・イヤーということで、私のフェルメール鑑賞も今年に入って3度目ですが、「フェルメール、○○の謎に迫る」などと題したテレビ番組が目に付きます。
似通った内容の番組も多く、若干食傷気味ですが、814日にBS日テレでオンエアされた「ぶらぶら美術・博物館、マウリッツハイス美術館展」は、ナビゲーターの山田五郎さんと東京都美術館・学芸員の方のわかりやすいガイドで参考になる情報も多く好感が持てました。

今回美術展の売店で私が買い求めた美術手帖
20126月号増刊 特集フェルメールは、携帯便利な小型ムックに最新情報が満載です。


※フェルメールの作品は修復により新発見がある例が色々あり、このブログでも以前ご紹介していますのであわせてお読みいただければ幸いです。

「日本人は“フェルメールブルー”と“引き算の美学”に惹かれる?」(2012.1.17


《『謎解き』挑戦のガイドブック》にもオススメ!


美術手帖 2012年6月号増刊 特集 フェルメール

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  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2012/06/07
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フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版)

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  • 作者: 朽木 ゆり子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/09/15
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 ◆おまけの情報◆

東京都美術館は、リニューアル工事によりバリアフリー化がなされました。
また、開館時間の延長や、お子様向けのツール貸し出しなどもあります。
展示作品数は、厳選48点なのでゆっくり鑑賞できます。


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