フィレンツェ名画散歩・・・・ウフィツィの次は、メディチ家宮殿内のピッティ美術館へ [私的美術紀行]
(ボーボリ庭園からピッティ宮殿を見下ろす)
メディチ一族が贅を尽くして作り上げ、ルネサンスの巨匠が育った“芸術の都”として、日本人にも大人気のフィレンツェには、ウフィツィ美術館の他にも見所がたくさんあります。
(フィレンツェを流れるアルノ川)
花の女神フローラがその名の由来とされるフィレンツェ、1999年の初訪問時は念願だったウフィツィに加えて、アカデミア、サンマルコ修道院の3カ所を見学しました。
(フィレンツエの地図:
Photo by 講談社「世界の美術館」)
2004年7月、2度目のフィレンツェ訪問時に見学したアルノ川左岸の「ピッティ宮殿美術館」は、オススメ名画鑑賞スポットのひとつです。メディチ家歴代当主の壮大なコレクションが絢爛豪華な装飾の宮殿内の壁一杯に展示されているのはまさに圧巻です。
ピッティ宮殿は巨大博物館となっていて、15-17世紀ヨーロッパ絵画を展示する(パラティーナ)美術館の他に、近代美術館、宝物や衣装などの博物館もありますが、16世紀半ばにコジモ1世が妻エレオノーラのために造成した「ボーボリ庭園」の見学は外せません。
(「ボーボリ庭園:
「円形劇場」と名付けられた場所から望む)
(「バッカスの噴水」(複製):
コジモ1世のお気に入りの小人をモデルにした彫刻)
イタリア式庭園の原型のひとつとされる広大な庭には、彫像や噴水を配した幾何学的な庭園、円形劇場、並木道、人工洞窟グロッタなどがあり、数百もの大理石彫像が点在しています。私と娘は夏の暑い日盛りに庭園を見学したしたのでボーボリの丘を一回りしてくるだけで汗みずくになってしまいました。
連続した3室で構成されたグロッタはローマ時代の庭園洋式で、夏の太陽を避けるための設備でもあるそうですが、精神を空想へと誘う夢の空間として機能していたとか。ほの暗い壁面は異教の神々に彩られたユートピアを再現したのだそうですが、私にとっては「グロテスク」*としか思えない不思議な場所でした。
*本来は「洞窟の中で発見された装飾」という意味
(ピッティ美術館内部:
Photo by 講談社「世界の美術館」)
さて、「ピッティ宮殿」の2階にある「パラティーナ美術館」の絵画作品ですが、「ヴィーナスの間」、「アポロの間」などギリシャ神話の神々の名がついた8室に展示されています。いずれの部屋も名画が所狭しと飾られていますが、様式や年代、作者別などの系統だった分類はされていないのでお目当ての作品を探し出すのはちょっと苦労しました。
数多の名画の中から、私の印象に残った作品をいくつかご紹介します。
★「小椅子の聖母」★
ラファエロ、1514年頃?
(Photo by 講談社「世界の美術館」)
多忙なローマ時代の宗教画。高貴な「聖なるマリア」像から脱皮して、人間的なマリアを描いたといわれる。
トンド(円形画)のなかに愛らしい聖母子とヨハネがうまくおさめるため、マリアの膝の形は本来無理なポーズ。
日本画家の下村観山が、日本絵具で模写した1903年の作品が横浜美術館にある。
★「大公の聖母」★
ラファエロ、1504~1506年頃
(Photo by 小学館「週刊美術館」)
フィレンツェ時代の作品。教会の絵はがきやパンフレットにも使われるほど定番となった聖母子像。
西欧絵画で聖母が玉座から降りて立たせた聖母は革新的だった。
★「ラ・ヴェラータ(ヴェールの女)」★
ラファエロ、1515-1516年頃
(絵はがき)
右手の表情が貞節をあらわすこの作品のモデルは諸説あるが、ラファエロの恋人?
2001年に東京で開催された「イタリア・ルネサンス~宮廷と都市の文化展」に出品され、ポスターなどにも使われた。
★「眠るアモール」★
カラヴァッジョ、1608年
(Photo by 東京書籍「イタリア・ルネサンスの巨匠たち」)
ローマで殺人を犯し逃亡中のマルタ島時代、フィレンツェ出身の騎士フランチェスコ・デッランテアのために描かれた小品。
愛の神アモールが眠るということは情熱が抑えられて理性が起きることを示し、騎士にふさわしい禁欲の美学を表す。
逆光の中で眠る幼児は、死んだ赤ん坊をモデルにしたといわれる。
★「悔悛するマグダラのマリア」★
ティツィアーノ、1530-1533年頃
(Photo by 講談社「世界の美術館」)
40代になったばかりのティツィアーノがウルビーノ公のために描いた作品。
敬虔な場面をヴェネツィア派の巨匠は、輝くような長い髪だけで身体を覆うという官能的なポーズで描いた。
上気した頬とうつろな瞳。神に祈りを捧げた後の法悦の表情がリアル。
★「悔悛するマグダラのマリア」★
ティツィアーノ、1565年頃?
(絵はがき)
ナポリ、カポディモンテ国立美術館所蔵で、前記2001年の東京に出品された作品は着衣で胸が隠されているが、マグダラのマリアの表情も泣き顔に見える。
80歳まで生きたティツアーノの晩年は悲劇的なまでに苦悩に満ちた日々で、彼の魂には常に絶望と死の感情があったといわれている。エルミタージュ美術館には、画家最晩年の1565年頃制作された“同タイトルでほぼ同じ衣装と構図”の作品があるので、同じ時期に描かれたのではないかと思われる。
◆おまけのフィレンツェ情報◆
フィレンツェでは、名物料理「Bistecca alla Fiorentina」(炭火で焼いたフィレンツェ風Tボーンステキ)を賞味するのもお忘れなく!
2人前で1キロぐらいとボリューム満点ですが、塩味だけのあっさりした牛肉はやわらかくて美味。トスカーナワインとよく合います。
このブログでも何度かご紹介している有地京子先生の春季美術セミナー「イタリア美術散歩」が先日終了しました。
私が初めて聞くようなとっておき情報が満載の楽しいセミナー、秋季は「パリ美術散歩」です。
どんな作品が紹介されるか今から楽しみです。
偶然ですね!
わたしも1999年にウフィツィ美術館に行きましたよ!
あの時は随分、長蛇の列での観賞でしたが、
ジョージさんもそうでしたか?
ただ、絵画よりも物乞いのジプシーが多かったのに驚き、
そちらの方が印象強く残ってます~(>_<)
by collet (2011-05-27 12:25)
nikiさん、colletさん
ご訪問ありがとうございます。
1999年にイタリア訪問したときは、東欧からの避難民なのか、どこに行ってもいわゆるジプシーみたいな物乞いが多くてびっくりしました。
ツアーで行ったので、ウフィツィも予約時間にスムーズに入館。美術留学しているという現地ガイドさんの解説が素晴らしくて、他のお客さんが近寄ってくるほどでした。(最近はイヤホンガイドになったので他のお客さんには聞こえない?)
ピッティ美術館の時は、気ままな個人旅行でガイドなし。
お目当ての作品探しが結構大変でした。
by ジョージ (2011-05-27 15:11)