南スペインの情景画を描くイシイタカシさん・・・私も旅の思い出をこういう絵に描きたかった [私的美術紀行]
(絵はがき「風の吹き抜ける村」)
(絵はがき「時の流れ」)
南スペインのフェレイローラという小さな村と房総の館山を行き来して絵を描いているイシイタカシさんという画家がいます。
広告会社のデザイナーとしてサラリーマン生活を続けていたイシイさんが<絵を描きたい>との思いを胸に単身スペインに旅立ったのは30数年前。
9年間アンダルシアの村人や羊飼い、ジプシーたちと交流しつつ作品を描き続けたそうですが、“絵を描きたい”と“絵で食べていく”のは別問題という時期もあったとのこと。
帰国後各地で開催した個展が成功し、現在はグラナダに聳えるシエラネバダ山脈の南面に広がるアルプハーラ地方にアトリエを構え、南房総・館山の山中に友人と手作りで建てた家と行き来する生活。どちらも海に近い里山の環境のなか畑仕事にもいそしみながら絵を描くというシニア世代にとって理想のライフスタイルです。
学生時代の仲間の先輩にあたる方というご縁で、先日、青山での個展会場にお邪魔しました。
(来場した旧友たちと楽しそうに談笑するイシイさん(左側手前)
展示作品の数もとても多いのですが、カードケースに用意された作品の絵はがきは数え切れません)
今回の個展ではスペインだけでなく南欧各国の旅先で描かれた作品も一緒に展示されていましたが、有名観光地の絵はがきのような絵というのは殆どありませんでした。
目に映った景観を自らの情念で解釈し、生活の気配が感じられる絵をイシイさんは「情景画」とよんでいます。イシイさんの作品の絵はがき裏にある小さなトレードマークは南スペインの象徴ともいうべきロバをひく村人。優しいタッチと独特の色遣いの情景画をみていると、雑事で疲れた心が癒される気分です。
私は絵画鑑賞と海外旅行が趣味で、旅先で見た景観をスケッチしたり、作品をオリジナル絵はがきにするのが夢でしたが、残念なことに自分で絵を描く才能には恵まれず、せいぜい自分好みの構図でデジカメ写真を撮影するだけ。
イシイさんの作品のタイトルには、地名などが入っていないことも多いのですが、私のスペイン旅行の思い出や心象風景に繋がる作品を何点かご紹介します。
★セビーリャとフラメンコ★
「朱夏」(上)と「マヌエラ・カラスコの踊り」(1983年)
1975年スペインに渡ったイシイさんはセビーリャ郊外のアルカラ・デ・グアダイラに滞在。
セビーリャでは秋に、この地方で誕生したフラメンコ最大のフェスティバルが行われます。
★古都トレド★
絵はがき「トレド有情」(上)と「満月」
先日訪ねたトレドのビューポイントで私が撮影した写真と似たアングル
★ラマンチャ地方の風車★
風の強いラマンチャ地方の風車は、ドン・キホーテが巨人と間違えて戦いを挑んだエピソードで有名ですが、私たちもカンポ・デ・クリプターナの風車を間近で見てきました。
絵はがき「風紋」
アルカサール・デ・サン・ファン付近を走る列車の車窓から見える景色に似ています
(Photo by DVDブック「世界の車窓から」スペイン2)
★アンダルシアのオリーブ畑★
絵はがき「永遠の物語」
アンダルシア地方は世界最大のオリーブ油生産地。バスの車窓からも見渡す限りオリーブの畑が・・・
(白ワインにあう料理って?)
さて、イシイさんは画業を続けるかたわら、石井崇として新聞雑誌に連載・寄稿するなど、幅広い分野で活躍されています。スペイン暮らし関連の著書も多数ありますが、スペインの人々の暮らしや食べ物などに興味がある私は、20年近く前に出版された「スペイン四季暦(春/夏)」「同(秋/冬)」にどっぷりはまってしまいました。(絶版のためアマゾンのマーケットプレイスで入手)
“普段着のスペインが見えてくる”というキャッチコピーそのままに、ぱらぱら見ているだけでも楽しくなる素敵なイラストが満載のこの本はしばらく私の愛読書になりそうです。
(アンダルシアの白い村、店先に並ぶ新鮮なフルーツたち)
”リタイアしたら物価の安いスペインで年金暮らしを“などと言われ団塊の世代に夢を与えてくれたスペイン暮らしも経済情勢が激変した今や”夢のまた夢“になってしまいましたが、つかの間のイメージトリップを楽しむ私です。
石井さんは女性に人気がある画家と聞きました。
手元に画集があればいつでも好きなときに鑑賞できますね。
- 作者: 石井 崇
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1994/11
- メディア: 大型本
ウニづくしの誘惑には克てない・・・デパートの北海道展でお手軽グルメツアー [食べること]
旅の楽しみのひとつに地方色豊かな郷土料理や名産品を味わうことがありますが、近頃はネットのお取り寄せという便利なシステムで居ながらにして全国のグルメを楽しめます。その土地の新鮮な食材を割安価格で入手できるというので各地の「道の駅」も車で移動する人に大人気のようです。
日頃あまり車を利用せず、国内旅行に行く機会も少ない私の楽しみは、デパートなどの物産展や全国の駅弁を集めた催事です。
中でも海産物をはじめ酪農や野菜など特産品がたくさんある北海道展は、物産展の王者。人気のある北海道展も競合が激しい東京地区のデパートは各社とも独自企画の商品を限定発売するなど消費者の財布の紐をゆるめさせる知恵を絞っています。そうはいっても年金生活者としてはあれこれ買いまわるわけにもいかないので事前に情報収集して厳選するようには心がけています。
今年の秋も、松屋の「GINZAの北海道展」に出向き“一点豪華主義”をテーマに北海道グルメを味わってきました。といいつつ、やはり一つには絞りきれず、2日通ってしまいました・・・
★札幌「海鮮どんぶり茶屋」の「北の贅沢至宝丼」★
甘くてとけてしまいそうなのにしっかり存在感のある味わいの大きなボタン海老と生ウニ、そしてあっさりした秋鮭とイカはまさに北海道の味覚。
野菜として添えられていた刻んだ山芋はいくらと相性抜群。
休日の夕方イートインで娘と一緒に。
★物産展の常連、利尻「食堂丸善」の「北海磯盛弁当」★
おいしいだし汁で炊き込んだうにめしの上に蒸しウニ、いくら、アワビの3点盛りの豪華版。
ひとり贅沢ランチに初購入。
★札幌じゃがいもHOUSEの
「農夫のウニ(右)・カニクリームコロッケ」★
夕食のおかずとして購入。
初めて味わったジャガイモとウニはまた食べてみたい組み合わせ。
★日原農園「メロン」★
この出展にあわせて生産された完熟メロンは毎回のリピート品。
さて、今回はこの4品を購入しましたが他にも機会があればまた食べてみたい北海道グルメがいくつかあります。
★利尻「食堂丸善」の
「利尻磯めしかにみそデラックス」★
カニ肉とみそを混ぜて食べる濃厚な味が病みつきに。
小腹を満たすなら、シンプルな「うにめしのおにぎり」がオススメ。
★札幌後楽園ホテルの
「大きなホタテと和牛ステーキ弁当」★
どかんと来るおいしさ!
★利尻「食堂丸善」の焼きウニ弁当★
心ゆくまでウニ尽くしを堪能・・・
★北海道グルメがてんこ盛りのスープカレー★
海のうまみがぎっしり詰まった分厚いホタテの存在感。
◆十勝名物の豚丼にウニのせ◆
甘辛ダレの豚丼はおいしいけれど、正直言うとウニはあまりあわない?
こうやって並べると、私はウニの誘惑に克てないことがよく分かります。
娘はウニを飽きるまで食べたいなどと言いますが、私はほどほど食べられれば十分幸せです。
そういえば、以前ラッコがホタテばかりかウニを大量に食べてしまったというニュースがありました。
おいしいものはラッコもわかるといっても漁師さんにとっては大被害。異常気象の影響でホタテが不漁という今年はラッコ対策を考えているでしょうか。
情熱の国スペインの熱い魂・・・”足音を自由に操りリズムを刻むフラメンコ”鑑賞ツアー [海外旅行]
9月のスペイン旅行、グラナダで “哀愁のアルハンブラ宮殿”を見学してイスラム建築最高峰の美を堪能した夜は、スペインを語るのに欠かせない芸術、「フラメンコショー」鑑賞ツアーです。
フラメンコは、イスラム勢力に占領されていた15世紀、遠くインド北部からアンダルシア地方に移住したヒターノ(ジプシー)たちの伝統的な踊りと土地の民謡、ユダヤ人の歌が融合して生まれたのが始まりとされています。
ヒターノ(ジプシー)たちの長く迫害された歴史と熱い魂の叫びが込められたフラメンコも、洗練された舞台芸術に進化した現在は国立の芸術大学などでフラメンコを中心に様々なダンスを勉強した踊り手も多くなっているそうです。
ショーやナイトライフが充実したマドリードの方がダンサーのレベルは高いのかもしれませんが、私は、いわゆるジプシーのファミリーが伝承芸能として演じるステージを彼らが生活拠点としてきたアルバイシン地区にある洞窟タブラオで鑑賞したいと思っていました。
タブラオのフラメンコショーは1回目はたいてい観光客向けのわかりやすい構成で、夜が深まるほどうまい踊り手が登場するといいますが、ツアー旅行者でフラメンコ通でもないのでほどほどの踊りをみることができればよしとしましょう。
★午後9時前、ようやく空が暗くなる9月のグラナダ★
ホテルでの夕食後、タブラオの送迎バスで
アルバイシン地区にあるタブラオ「ロス・タラントス」へ。
このタブラオは日本人観光客も多い名物タブラオとかで、送迎バスを利用したら23時過ぎからのフラメンコショーの前に夜のアルバイシン地区お散歩ツアーに連れて行かれたというネット情報も。
アルバイシン地区の路は狭くて入り組んでいるのでグラナダでは路線バスも写真左下の送迎バスのようなミニバス。
★アルハンブラ宮殿と向かい合うアルバイシン地区★
最も危険な世界遺産として知られていたが、現在は観光客も多く訪れる。
(前回のグラナダ訪問時は、ホテルからタクシー利用で写真中央の
サン・ニコラス教会の展望台まで行き、アルハンブラの夜景を鑑賞)
右手に見えるサクロモンテの丘はロマ(ジプシー)が暮らす地区で、洞窟タブラオが集まり夜は観光客で賑わう。
★洞窟を利用したタブラオ「ロス・タラントス」店内★
左右に椅子が並ぶ細長い部屋が二つあり、私たちは奥の部屋へ。
★突き当たりの壇上にある客席★
全体の動きが良く見渡せる特等席とか。
9時半過ぎから客が集まりだし、スタッフがドリンクの注文をとりに来たのでフルーティなサングリアを注文。
(テーブル席は食事もできる)
★ギター演奏が始まりようやくショーがスタート★
(21:40)
一番手ソロの女性バイラオーラはまだ修行中か。
師匠(?)がフラメンコステージの大事な構成要素である手拍子を
しながら鋭い視線で見守る中で若干緊張しながら踊る。
★二番手ソロバイラオーラはゴッドマザー(?)が登場★
(21:55)
ベテランの円熟した模範演技を披露。
彼女は、観光客をタブラオまで案内する役目も担っているらしい
★三番手ソロは綾小路きみまろ風の赤い衣装のバイラオール★
(22:02)
登場したときは一瞬芸人さんかと思ったが、上半身の胴体は微動だにせず、細かなステップを普通に踊っていた。
★男女ペアで踊る“パレハ”★
(22:17)
テーマは男性から女性への愛のメッセージ?
★謎の芸風のグラマラス美女。
マツコ・デラックス?それともミッツ・マングローブ?★
(22:25)
艶やかな真っ赤なドレスで登場。中高年日本人には懐かしい「ベサメ・ムーチョ」を情緒たっぷりに歌い上げたあと、貫禄十分にゆったりとしたステップを披露。
★ペアで踊ったバイラオーラがソロで登場★
(22:30)
切なげに苦しそうな表情で踊る。フラメンコの靴は踏みならす部分で音が微妙に異なる。小さなタブラオは、ステージが近いので足技のウォッチがしやすい。
靴のつま先とかかとには釘が何本も打ち込まれているので、踏みならす足音はよく響く。
★最後は、ペアのバイラオールがソロで登場★
(22:45)
背が高く“どや顔”の彼は、観客に視線を投げたり
余裕のステージ。
クライマックスの激しく足を打ち鳴らす“エスコビージャ”は
なかなかの迫力。
(※フラッシュ撮影禁止の店も多いが、今回は他の客が使用していたので途中からフラッシュ使用)
フラメンコは踊りが主役と思いがちですが、フラメンコの醍醐味は、カンテ(歌)やギターが奏でる音と踊り手が発するサパテアード(ステップ)の音の融合だといいます。
そして、手拍子とともに打ち鳴らされるカスタネットも私たちが子どもの頃お遊戯などで使ったカスタネットとは全く別モノ。12年前にセビーリャのお店でみたカスタネットは安くても1万円以上でした。
★「ロス・タラントス」の入口★
23時前にショーが終了。店の前は次回入場待ちのお客さん。
★ライトアップされた“アルハンブラ宮殿”★
タブラオから徒歩で“アルハンブラ宮殿の夜景”鑑賞スポットまで移動。
(デジカメの夜景モードで撮影)
★“アルバイシン地区夜のお散歩”ツアー★
束の間の夜の散歩を楽しんでから再び送迎バスでホテルに戻りました。
今回のタブラオでは観客の手が届きそうな距離で踊るので、踊り手の細かな動きもしっかりみることができました。
特にサパテアード(ステップ)のテクニック、足音と音楽・手拍子の音の融合を間近で感じることができたことがよかったです。
★群舞はどこか盆踊りに似ている?★
★セビーリャの劇場のクアドロ(額縁)★
(1998年9月撮影)
◆前回のスペイン旅行では、セビーリャの大きな劇場でフラメンコを鑑賞。
カンテから始まる伝統的なステージ構成で出演者も多人数。若手は群舞で早い時間に登場し、真打ちは、男女ともかなり貫禄体型のバイラオール(ラ)。
日本ではとかく若さが評価の基準になりがちですが、喜怒哀楽の表現やステップに音の融合が求められるフラメンコでは若い美女だけでなくベテランの円熟した踊りも評価されます。
膝に問題がある私には到底無理ですが、最近フラメンコを習い始めるシニア女性も多いと聞きました。
”仲間に恵まれた”佑ちゃんに栄冠・・・50年ぶりの早慶優勝決定戦 [ニュース]
(早慶による優勝決定戦を制した斎藤佑樹投手。
全スポーツ紙の一面を飾るニュースバリュー)
秋晴れの文化の日、20年ぶりの「満員札止め」となる3万6千人が駆けつけた神宮球場で、50年ぶりの早慶による優勝決定戦が行われ、2006年夏の甲子園大会優勝投手の斎藤佑樹を擁する早大が優勝しました。
秋の東京六大学野球リーグ戦の優勝争いは、早慶戦で早稲田は1勝すれば優勝、慶應はストレート勝ちで優勝決定戦に持ち込めるという展開。先日のプロ野球ドラフト会議で“同一チームにドラフト1位指名投手3人”が話題になった早稲田が圧倒的に有利な状況だったのですが、春季王者の慶應が、“ドラフト・トリオ”を粉砕(?)して連勝し、この日の決戦となったのでした。
甲子園の優勝投手で『ハンカチ王子』と呼ばれ一躍アイドルになった斎藤が早大1年の春からリーグ戦で活躍したことで古い野球ファンが戻ってきただけでなく、“佑ちゃん”目当ての女性客が神宮球場に急増した東京六大学野球がテレビのワイドショーで取り上げられるなど社会現象化。
この1-2年、ブームは沈静化していたのですが、“主将として最後の早慶戦に優勝をかけた斎藤の『プロ入りへの花道は優勝投手』”とメディアも世間も期待していたようなのです。
50年前、あの伝説の「早慶6連戦」に中学生ながら一喜一憂し、現在慶應の監督である江藤省三氏の現役時代のプレイを神宮球場で応援していた私は、5年間優勝から遠ざかっていた母校を監督就任最初のシーズンで優勝に導いた江藤監督に期待していました。
春の早慶戦では、斎藤にも打ち勝った慶應が優勝しているし、ドラフト候補になるような抜きんでた選手はいなくても、150人を超える部員から選ばれた優秀な選手たちはそう簡単に負けたりしないと・・・
“あとひとつ勝てば優勝”というのは簡単そうにみえてもそうではないことは今回も実証されました。
早慶戦の第1戦、先発した斎藤から奪った2点を2年生投手が守り抜いた慶應が勝利した後のインタビューで、慶應の江藤監督は「空気が読めなくてすみません」とコメントしていました。
(先日の連合三田会でも早慶戦の必勝を祈願。
春秋連覇を期待したが・・・
Photo by 三田会パンフレット)
“負けたらお終い”と前に進むしかなかった慶応も、優勝決定戦には気負いがあったのでしょうか、早稲田の猛打が炸裂し0-7というスコア。
しかも先発した斎藤の前に、慶應は7回までノーヒット。負けるにしても“佑ちゃんに『優勝決定戦でノーヒッター』という記録を進呈するわけにはいかない”と思っていた8回、守備の乱れをきっかけに慶應が5点を返して、5-7となったところで投手は斎藤から西武のドラフト1位指名選手・大石に交代。
8回の猛反撃も力及ばず最終的には5-10というスコアで慶應は敗戦し、“佑ちゃんが有終の美を飾る”結末になりました。
今朝のスポーツ紙の一面は、プロ野球日本シリーズ第4戦の“深夜まで繰り広げられた死闘”のニュースをさしおいて、早稲田優勝の記事と“佑ちゃんの晴れやかな笑顔”の写真。
今回、早稲田の勝利が不愉快というのは私たち慶應OBや関係者の個人的心情だけで、世間は“佑ちゃんの早稲田が優勝”という結末を望んでいたことがよくわかりました。
それにしても、優勝報告会で“佑ちゃん”が笑いながら言ったコメントはお見事です。
「本当にいろいろな人から斎藤は何かを持っていると言われ続けてきました。今日何を持っているか確信しました。
それは仲間です。こうやってチャンスを回してくれた仲間。応援してくれた仲間。慶應大学というライバルがいて、ここまで成長させてくれたと思います」
「それは仲間」・・・今年の流行語大賞に選ばれるかもしれませんね。
そして「プロ野球選手として息長く活躍して、ファンの記憶に残る選手になりたい」という斎藤佑樹君を来年からは私も応援したいと思います。