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2017年必見美術展巡りは、「ティツィアーノとヴェネツィア派展」から [私的美術紀行]

2017年前半の必見美術展情報≫

昨年(2016)は近年まれに見る美術展の当たり年といわれましたが、本年もまた豪華なラインアップが美術ファンを待っています。


IMGティツィアーノ展チラシ(A)のコピー.jpg
ティツィアーノ★『フローラ』★
(1515年頃):フィレンツェ、ウフィツィ美術館蔵
(本展チラシより)

日伊国交樹立150周年記念

「ティツィアーノとヴェネツィア派」展

2017.1.214.2
東京都美術館

ヴェネツィア派の美術展は昨年、国立新美術館で開催されたばかりですが、本展は、ルーベンスやルノワールも憧れた“画家の王者”ティツィアーノをはじめとするヴェネツィア・ルネサンス美術の名作が多数出展されます。

本展チラシ等のメインビジュアルに使われているティツィアーノ初期の代表作のひとつ『フローラ』のキャッチコピーは、“バラ色の女神の誘惑”
フローラは古代神話の花の女神ですが、古代ローマで最も人気があり奔放だった祭りの主役「娼婦フローラ」に関連した寓意とされています。

IMGティツィアーノ展チラシのコピー.jpg
ティツィアーノ★『ダナエ』★
15441546年頃):ナポリ、カポディモンテ美術館蔵
(本展チラシより)

ティツィアーノ(1490-1576年)は、本展にも肖像画が出品されているローマ教皇パウルス3世を擁する時の権勢家ファルネーゼ家との関係確立に成功し、ローマを訪れてラファエロやミケランジェロの作品を見、70歳になったミケランジェロとは実際に会っています。

今回が
初来日となるナポリの美術館所蔵の『ダナエ』は、ローマへ旅立つ前にファルネーゼ家のために描いた作品です。

IMGプラドのダナエのコピー.jpg
(参考作品)ティツィアーノ★『ダナエ』★
1553年):プラド美術館蔵
(Photo byイタリア・ルネサンスの巨匠たち)

ギリシャ神話の名場面とされる“黄金の雨に姿を変えてダナエと交わる最高神ゼウス”をモチーフにした作品は、レンブラントをはじめ多くの画家が好んで描いています。
ティツアーノが後年描いた、同じモチーフの別バージョンの作品がプラド美術館やエルミタージュ美術館にあるので、ご覧になった方も多いのでは。


聖書の名場面“悔悛するマグダラのマリア”も絵画作品の人気テーマで、今回は2001年にも来日したナポリの美術館の作品が出品されています。

マグダラのマリアIMGティツィアーノのコピー.jpg
ティツィアーノ★『マグダラのマリア』★
1567年):ナポリ、カポディモンテ美術館蔵

(本展チラシより)

IMGエルミタージュのマグダラのマリアのコピー.jpg
(参考作品)ティツィアーノ★『悔悛するマグダラのマリア』★
1560年代)エルミタージュ美術館蔵
(Photo by週刊世界の美術館)

ティツィアーノが77歳に描いたナポリの作品とほぼ同時期に制作されたと思われるエルミタージュ美術館所蔵の同じモチーフの作品は構図もマリアの着衣も類似しています。
胸に手を当て目に涙を浮かべて悔悟するマリアの手前に置かれたどくろや背景の様子からマリアの悔悟の深さが読み取れる作品です。

しかし、ティツィアーノが40歳頃に描いたフィレンツェ、ピッティ宮殿の所蔵作品は、神に祈りを捧げた後の法悦の表情をリアルに描き、聖女を官能的に描いた作品として注目されていました。

フィレンツェ_悔悛するマグダラのマリア.jpg
(↓拡大図)
マリアの輝くような長い髪で覆われた白い肌や胸元、上気した頬とうつろな瞳・・・

IMG_ピッティのマグダラのマリアのコピー.jpg
(参考作品)ティツィアーノ★『悔悛するマグダラのマリア』★
1530年頃)フィレンツェ、ピッティ美術館蔵

(Photo by
週世界の美術館)

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「ミュシャ」展

2017.3.86.5
国立新美術館


IMGミュシャ展4つの花チラシのコピー.jpg
アルフォンス・ミュシャ★<四つの花「カーネーション」、
「ユリ」、「バラ」、「アイリス」
>★

(1897年):大阪、堺市所蔵


ミュシャ(1860-1939年)は、世紀末のパリで活躍したアール・ヌーヴォーの大人気デザイナーで、
女優サラ・ベルナールのポスターで一躍名を知られることになったのですが、晩年は故郷であるチェコに帰国し、祖国への想いをカンヴァスに描いていました。

IMGミュシャ展のチラシのコピー.jpg
アルフォンス・ミュシャ★<スラヴ叙事詩原故郷のスラヴ民族』>★
1912年):プラハ美術館蔵

第一次世界大戦を挟み17年を費やして描かれた総数20点からなる連作「スラヴ叙事詩」は、1928年にプラハ市に寄贈されましたがあまりにも巨大な連作が一堂に展示公開されたのは彼の死後24年を経た1963年のことでした。

本展は、国立新美術館の企画展示室にようやく収まる最大6×8メートルの大作など全20作が、チェコ国外で世界初公開となる前代未聞のスケールの展覧会。

チェコを旅して民族の歴史に触れ、ミュシャが描いたプラハの聖ヴィート教会の美しいステンドグラスに魅せられた私にとって、自らのアイデンティティに寄せるミュシャの熱い想いを東京に居ながらにして感じることができるのはとても楽しみです。


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「大エルミタージュ」展
 オールドマイスター 西洋絵画の巨匠たち

2017.3.18
6.18
森アーツセンターギャラリー

ロシア、ロマノフ王朝の栄華を今に伝えるエルミタージュ美術館の膨大なコレクションから、17・18世紀バロック、ロココの巨匠、“オールドマイスター”といわれる画家たち(ティツィアーノ、クラーナハ、ルーベンス、ヴァン・ダイク、レンブラント、スルバラン、フラゴナールなど)の傑作が出展されるとのこと。

IMG大エルミタージュ展チラシのコピー.jpg
ティツィアーノ★『若い女性の肖像(部分)★
1536年頃):エルミタージュ美術館蔵
(本展チラシより)

IMG林檎の木の下の聖母子のコピー.jpg
クラーナハ★『林檎の木の下の聖母子』★
1530年頃):エルミタージュ美術館蔵

(Photo byドイツ・ルネサンスの挑戦 デューラーとクラーナハ)

昨年、日本初の大回顧展が開催されたクラーナハによる個人の祈念ための甘美な聖母子像は、ヴィッテンベルクのザクセン選帝侯宮廷でも大変好まれ、クラーナハは多くのバリエーションを制作しています。

<おまけの情報>
ティツィアーノの描いた最も誘惑的な女性像といわれる『ウルヴィーノのヴィーナス』は、1538年頃の作品とされていますが、その少し前に制作されたと思われる本展チラシの『若い女性の肖像』から、顔つきやアクセサリーを転用したようにも見受けられます。

ティツィアーノヴィーナスのコピー.jpg
(参考作品)ティツィアーノ★『ウルヴィーノのヴィーナス』★
1538年頃):フィレンツェ、ウフィツィ美術館蔵
(Photo by週刊世界の美術館)

(↓拡大図)
IMGウルヴィーノのヴィーナス部分のコピー.jpg
(参考作品)ティツィアーノ★『ウルヴィーノのヴィーナス(部分)★
1538年頃):フィレンツェ、ウフィツィ美術館蔵

(Photo byイタリア・ルネサンスの巨匠たち)


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ボイスマン美術館所蔵 
ブリューゲル「バベルの塔」展

16
世紀ネーデルランドの至宝
―ボスを超えてー

2017.4.18
7.2
東京都美術館



現存する油彩画はわずか40余点という、16世紀ネーデルランド絵画の巨匠ピーテル・ブリューゲル1世(1525/30-1569年)の傑作『バベルの塔』が24年ぶりに来日。
さらに、奇想天外な怪物たちが跋扈する世界を描いた奇才、ヒエロニムス・ボス(1450頃-1516年)の貴重な油彩画2点も初来日という大型企画展です。

IMGバベルの塔展チラシのコピー.jpg

ピーテル・ブリューゲル1世★『バベルの塔(部分)★
1568年頃):ロッテルダム、ボイマンス美術館蔵


IMG_ボッスの作品チラシ.jpg
(本展チラシより)


IMGウィーンのバベルの塔.jpg

(参考作品) ピーテル・ブリューゲル1世★『バベルの塔』★
(1563):ウィーン美術史美術館蔵

(Photo by西洋美術館)

ブリューゲルは生涯で3点の『バベルの塔』を制作したと推定されますが、現存する2点のうちボイマンス美術館の『バベルの塔』は、ウイーンの作品と目線を変え、周辺描写を加えることで、塔の象徴性をより強めたといわれます。

ウィーンの作品は、単に旧約聖書の物語を主題に描くのではなく、建築技術者の経験があるのかと思うほど具体性のある細密な建設風景が特徴。
作品のサイズは、ウィーン(114×155㎝)と比較して、ボイスマンの方は小ぶり(60×74.5㎝) 。


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エアコン完備の都心の美術館巡りはシニアライフの大きな楽しみのひとつ。
最近の私にとって、欧米の美術館めぐりはハードルが高いのですが、東京に居ながらにしてハイレベルの美術鑑賞が楽しめる幸せを感じる日々です。


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