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マネ「笛を吹く少年」初来日!「オルセー美術館展2014」まもなく開催 [私的美術紀行]

オルセー展2014のコピー.jpg

   
<オルセー展チラシVer.2

E.
マネ笛を吹く少年』(1866年)

1866年のサロンに応募して落選した作品。
明確な輪郭線などには日本の浮世絵版画からの影響もうかがえる。


今年は、「第1回印象派展」開催(1874年)から140年ということで、オルセー美術館から選りすぐりの名画が出展される「オルセー美術館展 印象派の誕生」が間もなく開催されます。
近代絵画の立役者・マネの貴重な作品11点が一挙公開されるなど、19世紀後半、伝統と革新が交錯したフランス美術を一望できる企画展になっています。


オルセー美術館展~印象派の誕生>


2014.7.9
10.20

国立新美術館


オルセー美術館展は日本では何度も開催されており、「オルセー美術館展
2010~ポスト印象派」の時は、“傑作絵画115点、空前絶後”とのキャッチコピーがおどっていました。今回はその時出品された作品より少し前の時代に描かれた作品が中心になると思われます。


私はパリのオルセー美術館を訪ねたことがあるので、84点の出品作品の殆どは既に鑑賞したことがあると思われます。しかし、諸般の事情でなかなかパリまで行けなくなった私にとって今回の展覧会での再会が特に楽しみな作品がいくつかあります。


オルセー展2014裏表紙のコピー.jpg

<オルセー展チラシ裏表紙>

C.モネ草上の昼食』(1865-66年)


1863
年の落選展(皇帝ナポレオン3世がサロンに落選した画家たちのために開いた展覧会)でスキャンダルを引き起こしたマネの同名の作品に触発された作品だがこちらは同時代の風俗がテーマ

1866年のサロンのために計画した大作は期日までに完成が間に合わず、当時経済的に困窮していたモネは滞納していた家賃のかたにとられてしまった。
モネが買い戻した時、画面はカビで傷んでおりモネ自身が中央部分と左側部分を残してあとは破棄した。
その2つの断片がこの作品。


<参考作品>
草上の昼食オルセー展2014_0001.jpg

E.マネ草上の昼食(1863) :オルセー美術館蔵
Photo by別冊太陽「パリオルセー美術館」)


今回、19世紀印象派の女性画家で、マネの絵画のモデルとしても知られるベルト・モリゾの代表作が再来日しています。

2010年に東京で開催された「マネとモダン・パリ」展のイメージキャラクターに使われた作品のモデルがベルト・モリゾで、バルビゾン派に師事する画学生だったモリゾはマネに絵画を学びながらバルコニー
1868-69年頃:オルセー美術館蔵)など多くの作品のモデルを務めていました。


<参考作品>

マネ展チラシ_0001のコピー.jpg

<マネとモダン・パリ展(2010年開催)チラシ>

E.
マネスミレの花束を持ったベルト・モリゾ
(1872)オルセー美術館蔵





揺りかごオルセー展2014.jpg

B.モリゾ揺りかご』(1873年)
Photo by別冊太陽「パリオルセー美術館」)

1回印象派展の出品作。


一緒に画家をめざしながら専業主婦となった姉エドマと娘エブランシュがモデル。

上から垂れ下がる布によって赤ん坊の顔はよく見えないが、母親は幸せそうに見えながら、若干の憂いが見て取れる表情。画家として活躍する妹に対して、出産により画家への道を諦めた自分への残念な気持ちだろうか。

この作品が描かれた翌年、モリゾはマネの弟と結婚し、
5年後に娘を出産する。
(庭にいる夫と娘を描いた作品が、
620日まで森アーツセンターで開催中の「こども展」に出品されている)



今回、ミレーの『晩鐘』(1858-59年)やモネの『かささぎ』(1868-69年)もゆっくり鑑賞したい作品ですが、個人的には、早くからサロンで活躍した画家、カバネルの『ヴィーナス誕生』に注目しています。
マネの『オランピア』(1863年)が1865年のサロンに入選した時、マネはごうごうたる非難を浴び、保守的な観衆は怒り狂ったというのですが、それと対照的な作品といわれる『ヴィーナス誕生』とは?

オルセー展2014_0002のコピー.jpg

<オルセー展チラシP2

右下:A.カバネルヴィーナスの誕生』(1863年)

アカデミックな裸婦像の典型で、
前時代のロココ趣味の回帰も感じられる作品。
理想化された神話の女神はブルジョワ観衆の趣味にあっている。

マネの『草上の昼食』が落選した1863年のサロンでこの『ヴィーナス誕生』は評判になり、皇帝ナポレオン3世が高額で購入。




私自身はマネという画家について作品を通しての知識しかなく、彼の家族などについてのエピソードを殆ど知りません。そんな彼が奥さんをモデルにした作品が出品されています。


オルセー展2014_0003のコピー.jpg

<オルセー展チラシP3

3
段目右:E.マネ読書』(1865/1873-75年に加筆)

モデルはマネの2歳年上の妻シュザンヌ。
マネにとって妻はお母さんのような存在だったといわれるが、一体どんな家庭生活だったのだろうか?


のちに「印象派」となる画家グループと親しく付き合いながら、マネ自身は印象派展には一度も参加していないのはなぜか?
矛盾するようですが、保守的な世間的な成功を願う夢と、鋭く革新的な芸術観がマネの中には両方存在していたと「名画の秘めごと」(有地京子著)には書いてあります。


さて、本展覧会最大の目玉、マネの『笛を吹く少年』は、私が子どものころ初めて出会った西洋絵画だったような気がします。
母親の実家にあった古い絵本の中でこの少年を見た記憶があるのですが、今となっては真実だったのかどうかわかりません。
いずれにしても、私の西洋絵画鑑賞の原点といえる作品に再び会えるのはとても大きな喜びです。


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コメント 3

笛吹童子

マネ「笛を吹く少年」初来日!とありますが、私は今から30年位前に上野の国立西洋美術館で見た記憶があります。
思いのほか大きいサイズだったので驚いた記憶が残ってますがあれはレプリカだったのでしょうか?
それとも夢でも見ていたのでしょうか?
記憶を確かめようと調べてみると2001年には府中市美術館でもマネ展があり展示してたようです。
これで私の記憶が正しければ3度目の来日ということになります。
by 笛吹童子 (2014-08-05 01:51) 

ジャパン爺さん

私も50数年前(高校生時代)に上野で見た時の鮮烈な記憶が残っています。
by ジャパン爺さん (2014-10-01 10:57) 

ジョージ

ご指摘ありがとうございます。マネの作品について不正確な表現がありましたことお詫びいたします。
by ジョージ (2014-10-01 13:06) 

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