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「オルセー美術館展2014」を前に『ゴッホと色彩の旅へ』 [私的美術紀行]

来年、2014年の夏、オルセー美術館から珠玉の絵画約80点が来日することになりました。

「オルセー美術館展」といえば
2010にポスト印象派の傑作絵画115点が来日して“空前絶後”と称されたばかりなのですが、今回は1874年の「第1回印象派展」開催から140年の記念展ということで、マネをはじめ、モネ、ルノワール、ドガ、セザンヌなど印象派の立役者となった画家たちの作品などが出展される予定。

来年は、「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」も予定されており、美術ファンにとっては続々発表されるラインナップに今から期待が膨らみます。


KMゴッホ.jpg

★展覧会チラシ(表):ゴッホ種まく人』★
(1888年:クレラー=ミュラー美術館蔵)


私にとっては年内の美術展鑑賞納め(?)として、国立新美術館で1223日まで開催されている「印象派を超えて 点描の画家たち」展に行ってきました。

『夜のカフェテラス』や『アルルの跳ね橋』など油彩画
89点、デッサン184点にも及ぶゴッホコレクショ ンをはじめ近・現代の名画が集められているオランダ中央部オッテルローのクレラー=ミュラー美術館の所蔵作品を中心とした展覧会です。

クレラミュラー美術館夜のカフェのコピー.jpg

参考作品★ゴッホ夜のカフェテラス』★
(1888:クレラー=ミュラー美術館蔵)
(Photo by「世界の美術館」)



KM種まく人.jpg

絵はがき★ゴッホ種まく人』★
(1888617日~628日:クレラー=ミュラー美術館蔵)


さて、本展覧会の目玉作品はなんといってもゴッホの『種まく人』でしょう。

ゴッホはオランダ時代から敬愛するミレーの作品をモティーフにした『種まく人』を何度も描いています。アルルにやってきて初めての夏、
1番目に描かれた本作品は何度も手直しされたことが知られていますが、背景に燦々と輝く大きな太陽と黄色の空、紫とオレンジで点描のように描かれた大地など画面一杯に広がる鮮やかな色彩がゴッホの自身の開放感を象徴しているように見えます。


ゴッホ絵はがき種まく人.jpg

参考作品・絵はがき★ゴッホ種まく人』★
1888年:ファン・ゴッホ美術館蔵);
2010年「ゴッホ展~こうして私はゴッホになった」に来日

しかし、同じ年の晩秋から冬にかけて制作された3番目の作品(2010年の「ゴッホ展~こうして私はゴッホになった」に来日)では、既に残照の色合いが濃くなり、ゴッホ自身の暗闇が近づいていることを暗示しているように見えます。

(「種まく人」と浮世絵の影響についてはこのブログの過去の記事でご紹介しています。)


KM若い女の肖像.jpg

絵はがき★ゴッホ若い女の肖像』★
18906月後半~7月前半:クレラー=ミュラー美術館蔵
背景の色は元は赤だったのがはげ落ちてオレンジ色になった。

モデルは不詳だが日本の少女の風貌にも見えるこの肖像画は、ゴッホが拳銃自殺を図ったとされる7月27日のわずか数週間前の作品。
同じように日本人風に描かれた『ムスメの肖像』(ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵)と比べると、少女の表情の暗さが際だつ。


今回の展覧会は、印象派の感覚的な筆触分割には飽きたらず、科学的な知識をもとに独自の点描技法を開拓した新印象派の代表的な画家であるスーラ、シニャック、ゴッホ、モンドリアンなどの作品が「分割主義」というコンセプトで並べられています。

純粋色の点で描く「色を分割する」という新たな発想には、
20世紀の抽象絵画の萌芽が秘められており、美術史を体現するような展示でした。
ここでは、私自身が最近鑑賞した作品との関連という意味で興味深かった作品をいくつかご紹介します。

KMゴッホ(裏).jpg

<展覧会チラシ(裏)>
 ★左上スーラポール
=アン=ベッサンの日曜日』★
 
(1888年:クレラー=ミュラー美術館蔵)

 ★右上ゴッホ自画像』★
 
(18874月~6月:クレラー=ミュラー美術館蔵)

 下段
 ★左ゴッホ麦束のある月の出の風景』★
 (
1889年:クレラー=ミュラー美術館蔵)

 ★ゴッホレストランの内部』★
 (
1887年夏:クレラー=ミュラー美術館蔵)


1888年の夏、28歳のスーラはノルマンディー地方の漁港の風景を様々な方向から描いています。
展覧会のチラシ裏面で大きく扱われているスーラの『ポール=アン=ベッサンの日曜日』という作品と同じ年に描かれた作品が2010年に来日しています。

スーラ(オルセー).jpg
参考作品★スーラポール=アン=ベッサンの外港、満潮』★
1888年:オルセー美術館蔵);
2010年「オルセー美術館展2010」に来日
(Photo by 展覧会チラシ)


KMスーラ.jpg

絵はがき★スーラグラヴリーヌの水路、海を臨む』★
1890年:クレラー=ミュラー美術館蔵)


スーラは、理論に基づいた点描技法を創造し、その実践だけでなく技法の紹介にも務めたシニャックらとともに「新印象派」とよばれました。点描技法はパリを訪れていたゴッホやゴーギャンたちにも影響を及ぼしますが、多作志向で制作時間の短いゴッホは、スーラたちのような点描技法は自分には実践できないと語っていたとか。

スーラが31歳の若さで亡くなったあとは、シニャックが唯一の指導者となりますが、シニャックは色彩表現を強く打ち出すために筆触の単位を次第に大きくし、当初の点描からモザイクのような印象の作風になっていきました。

KMシニャック.jpg
絵はがき★シニャックマルセイユ港の入口』★
(1898年:クレラー=ミュラー美術館蔵)


13年後、同じテーマで描かれた作品。
シニャック(オルセー).jpg

参考作品★シニャックマルセイユ港の入口』★
1911年:オルセー美術館蔵)
(Photo by 展覧会チラシ)


ドニ「セザンヌ礼賛」(オルセー).jpg

参考作品★ドニセザンヌ礼賛』★
1900年:オルセー美術館蔵)
2010年「オルセー美術館展2010」に来日
(Photo by 西洋絵画史WHO'S WHO)

19世紀最後の年に描かれたこの大作は、ナビ派の画家たちによるセザンヌとルドンへの賛辞をあらわしている。


前回のオルセー美術館展には、ナビ派の代表的画家のドニの代表作『セザンヌ礼賛』が来日していますが、本展覧会には、ドニの描いた宗教的なテーマの作品が展示されていました。

KMドニカトリックの秘蹟.jpg
絵はがき★ドニカトリックの秘蹟』★
1891年:クレラー=ミュラー美術館蔵)

KMドニ病院での夕暮れの祈り.jpg

絵はがき★ドニ病院での夕暮れの祈り』★
1890年:クレラー=ミュラー美術館蔵)


写真はありませんがこの展覧会には、「分割主義」の究極の既結ともいうべき幾何学的抽象画のモンドリアンの代表作品や、ジャワ生まれのオランダ人画家であるヤン・トーロップなどふだん滅多にに見られない画家の作品も展示されていました。




《2014年の美術展速報》

オルセー美術館展~印象派の誕生
2014.7.9~10.20
国立新美術館

2014年オルセー展.jpg

2014年オルセー展の作品.jpg


ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展
2014.6.28~9.15
世田谷美術館

2014年ボストン.jpg


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