SSブログ

東山魁夷画伯のまなざしで辿る『ドイツ・ロマンティック街道』追想(後編) [私的美術紀行]

東山魁夷石の窓.jpg
★『石の窓』★

中世の城壁に囲まれて、

昔ながらのネルトリンゲンの町は静かに眠る。
市庁舎の石の階段の下に、
古風な石の窓が、
謎めいた暗さを覗かせている。

by 「東山魁夷小画集」


古代ローマ時代から続いているビュルツブルクからフッセンまで全長350キロのロマンティック街道沿いには、魅力的な街や村が点在しています。
私は、フッセンからローテンブルクまでは主要観光地で下車観光ができるヨーロッパバスを利用し、ビュルツブルクへは鉄道で移動しました。

半年かけてドイツ・オーストリア写生旅行をした画伯は、
「ドイツ・オーストリアを旅して」という画集のあとがきの中で、

“ニュールンベルク、バンベルク、アウグスブルクと、中世ドイツ皇帝の栄光を伝える街々の印象は強いものがあったが、それよりも私にとっては、ローテンブルク、ディンケルスビュール、ネルトリンゲンというような、小さな古い町々に心の安まる思いが深かった。”

と述べています。

あしかけ10日間でロマンティック街道からベルリンまで旅した私は、画伯のようにゆったりとした時の流れを楽しむことはできませんでしたが、ロマンティック街道の小さな街や村は、滞在した時間以上の満足感を与えてくれました。


P1000593ネルトリンゲン.JPG
ネルリンゲンの旧市街MAP★

1500万年前に落下した隕石によってできた盆地につくられたネルトリンゲンは、街を囲む中世の城壁がほぼ完全に残っており徒歩で一周できます。
ヨーロッパバスの停車時間はわずか10分間だったので、私のネルトリンゲン観光は、街の中心にある聖ゲオルク教会の見学のみで終了。


P1000592ネルトリンゲン.jpg
ネルトリンゲン

ヨーロッパバスの停留場は、市庁舎(右手の淡い色の建物)のすぐ前。
上に掲出した「石の窓」は、ここからは見えないが市庁舎の石の階段の下にあると思われる。


P1000591聖ゲオルク教会.jpg
聖ゲオルク教会の塔「ダニエル」★

高さ90メートルの塔に登ると直径1キロ程度のネルトリンゲンの街がすべて見渡せる。
今でも塔の番人が街の人々に礼拝の時間を知らせるそうだ。

ネルリンゲン聖ゲオルク教会DSC04609.jpg
聖ゲオルク教会の聖堂内

会堂形式の教会として南ドイツ最大級。
内部装飾は格調高く、装飾が美しいパイプオルガンもある。
画伯は、この聖堂内のスケッチを残している。



東山魁夷聖堂の中のコピー.jpg

聖堂の中

by 「東山魁夷小画集」


東山魁夷ネルトリンゲンのコピー.jpg

ネルトリンゲンの町

by 「東山魁夷小画集」


この看板は、ネルトリンゲンのヨーロッパバスの停留所のすぐ前にある「ホテルゾンネ」のもの。
「ホテルゾンネ」と同名のホテルは、ローテンブルクにもあり、その看板のスケッチも画集に収録されている。


ネルトリンゲンHゾンネDSC04606.jpg
ネルトリンゲンホテルゾンネ」★

この写真では若干見づらいが、スケッチに描かれている看板が見える。



ディンケルスビュールDSC00014.jpg
ディンケルスビュール


爆撃をうけなかったディンケルスビュールは、ごく当り前の古い町で、町の人々が特に意識して保存した様子も感じさせない。自然に古い家々が残ったかのように見受けられる。

しかし、何百年の年月をこうして変わらない姿を保っているのは、やはりそこに住む人の深い愛情に支えられてきたからだろう。観光地化されていない静かな町で、当てもなく歩くのにふさわしい風情を見せている。


by 「東山魁夷小画集」


南ドイツで一番美しいといわれる15世紀建造の木組みの家があるディンケルスビュールは、川と緑に囲まれた小さな町です。

町の中心地、マルクト広場には、ロマネスク様式とバロック様式が混在した聖ゲオルク大聖堂が荘厳な佇まいを見せています。
私たちが訪れた時はハイシーズンだったこともあり、大勢の観光客で賑わっていました。






ホテルドイチェハウスDSC04626.jpg
ドイチェハウス

広場の近くにある「ドイチェハウス」は、7層の木組みが美しい中世の家。
小さなバルコニーには花が飾られ、現在はホテル兼レストランになっている。

画集には、ドイチェハウスの壁面の絵と窓のスケッチが収録されています。

東山魁夷Hドイチェハウスのコピー.jpg

ホテル・ドイチェハウス

by 「東山魁夷小画集」


ロマンティック街道から少し離れますが、ドイツの南端でアルプス山脈を横断するアルペン街道の東端、オーストリア国境近くには、山と湖に囲まれたアルプス地方の景勝地、ベルヒテスガーデンがあります。

このあたりはかつてヒットラーが別荘を建てた地としても有名ですが、南にはケーニヒス湖が広がり、電動の遊覧船で湖畔の教会の美しい姿を見ることができます。


バイエルンのドイツ第一級の観光地であるケーニヒ湖の湖岸には、昔あった二軒のホテルがあるだけで、湖を巡る歩道さえつけられていない。遊覧船も電動船で、波を立てずに、ゆっくりと滑るように航行する。両岸は針葉樹の繁る切り立った断崖である。
湖のなかばで船のエンジンを止め、船員がトランペットを、一節ずつ区切って吹く。すると四方の岸壁から、こだまがいくつも返ってくる。湖の静寂は、この時いっそう深まり、山湖の霊に触れる思いがする。



DSC07733ケーニッヒ湖.jpg

2000メートル級の山々に抱かれたこの山岳保養リゾートは画伯がドイツ留学時代に各国からの留学生仲間と遊びに行った懐かしい思い出の街。
残念ながら私は行ったことがないのですが、先日見たTV番組でこの周辺の景勝地が紹介されていました。


東山魁夷明けゆく山湖.jpg

明けゆく山湖

★南ドイツ、バイエルンのケーニヒ湖。
黎明の爽やかなひととき、
岩山の頂が茜色に染って、
山と湖の青い眠りを呼び覚まそうとする。


by 「東山魁夷小画集」


★☆08年ドイツ・ロマンティック街道旅行記のご案内★☆

◆ロマンティック街道をバスで巡る・・・・2011.9.14の記事はこちら
◆ローテンブルクで中世の面影を満喫・・・・2011.9.21の記事はこちら
◆ビュルツブルクの世界遺産・レジデンツ・・・・2011.9.28の記事はこちら




《おまけの情報》

伝説上の騎士聖人・聖ゲオルク(ゲオルギウス)は、勇猛な竜退治の場面が絵画のテーマとして取り上げられることが多い。
先日このブログでもご紹介した今春東京で開催される「ラファエロ展」に、ルーヴル美術館の所蔵作品が展示される予定。


nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:アート

nice! 1

コメント 2

collet

絵画がお好きなジョージさんらしい追想記ですね。
こうやって、多方面から見直すのも、
また違った楽しみがありますものね~(*^^)v
by collet (2013-01-16 17:38) 

ジョージ

colletさん、ご無沙汰しておりますが、今年は母上と一緒にお出かけができてよかったですね。

絵の好きな知人のスケッチ旅行は、絵になる場所では、一箇所にじっくり時間をかけるそうです。
絵になりそうなところが多いロマンティック街道は、ゆっくり時間をかけて街を探訪してみると新しい発見がありそうです。


by ジョージ (2013-01-17 18:46) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。