2013年の東京、エル・グレコやラファエロの優美な聖母像に会える楽しみがある [私的美術紀行]
2012年も残り少なくなりましたが、本年東京では3つの展覧会でフェルメール作品を鑑賞することができ、まさにフェルメールイヤーとなりました。
私は、セザンヌ展、エルミタージュ美術館展などにも出向き巨匠たちの名画を鑑賞、首都・東京に住むメリットを享受したわけですが、そろそろ来年の展覧会情報が気になりますね。
2013年年明け早々から東京展が始まる「エル・グレコ展」など大型の企画展開催がいくつか発表されていますが、グレコの展示作品などについて少しご紹介したいと思います。
◆「エル・グレコ展」~世界の傑作、奇跡の集結~◆
東京展:2013.1.19-2013.4.7(東京都美術館)
(※大阪・国立国際美術館では、2012.12.24まで開催中)
スペイン絵画の巨匠「エル・グレコ展」は、グレコ没後400年を迎えるということで、プラド美術館、ボストン美術館など世界中の名だたる美術館やトレドの教会群から油彩画50点以上が集結する日本国内史場最大のグレコ展。
グレコファンの私にとって初めて出会う作品はもちろん、既にスペインなどで鑑賞したことのある作品との再会も非常に楽しみです。
エル・グレコはオリジナルと同じ構図の作品を複数枚制作することも多く、今回来日した作品の別バージョンの作品をご覧になった方もいるかと思います。
また、今回は「受胎告知」を主題にした制作年数の異なる作品が展示されていますので、画家の作風の変化を見る楽しみもあるのではないでしょうか。
★「無原罪のお宿り」★
(1607-1613年:トレド、サンタクスルス美術館委託)
Photo by 「週刊 世界の美術館」
サンタクルス美術館所蔵の長さ3メートルを超える大作には、グレコ独特の優美なマリア像の魅力がよく表れている。
登場人物の輪郭が曖昧であることが「無原罪の教義」の神秘性を高めているといわれるが、対抗宗教改革の時代、見る者の心に信仰心を喚起する情動的な絵画が求められたとのこと。
画面下方には、タホ川や大聖堂などお馴染みのトレドの風景が描かれている。
(古都トレドを愛したエル・グレコについては、以前このブログでもご紹介しています。あわせてお読みいただければ幸いです)
★「聖衣剥奪」★
(1605年頃:オルガス、サント・トメ教区聖堂蔵)
Photo by 展覧会チラシ
1579年、トレド大聖堂の祭壇を飾るために制作された真紅の聖衣の大胆な色彩は人々に衝撃を与えた。
本作は、グレコが後年それにならって制作したものひとつ。
トレドでのデビュー作は、民衆の頭がキリストより上にあることから教会側からクレームがつき、書き直しを命じられたり、画料を巡って裁判沙汰となるトラブルに見舞われたが、グレコは断固として「バランス」を主張し、書き直しには応じなかった。
★「聖アンナのいる聖家族」★
(1590-95年頃:トレド、タベラ施療院蔵)
Photo by 「週刊 世界遺産」
愛らしく理想化された若きマリアは、未婚のままグレコの息子を生んだヘロニアをモデルに描いたという説もある。
★「受胎告知」★
(1576年頃:マドリード、ティッセン=ボルネミッサ美術館蔵)
Photo by 展覧会チラシ
おそらくローマ時代の最後に描かれた本作は、グレコの作品の中でも際だった古典的調和を見せる作品。
★「受胎告知」★
(1600年頃:マドリード、ティッセン=ボルネミッサ美術館蔵)
Photo by 「週刊 世界の美術館」
本作はマドリードのアウグスティヌス会エンカルナシオン学院からの依頼で描いた作品。
グレコは「受胎告知」を主題とする作品を繰り返し描いており、プラド美術館や日本の大原美術館にもある。
★「修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像」★
(1611年:ボストン美術館蔵)
Photo by 「週刊 世界の美術館」
グレコの友人で詩人でもあった修道士は、グレコの功績を称えた詩を詠んでいる。
グレコの墓碑銘には「クレタは彼に生命を与え、トレドは彼に絵筆を与えた」というフレーズが刻まれている。
★「悔悛するマグダラのマリア」★
(1576年頃:ブダペスト、国立西洋美術館蔵)
Photo by 展覧会チラシ
グレコがスペインに渡る前後の作品。
★「フェリペ2世の栄光」★
(1579-1582年:スペイン、エル・エスコリアル修道院蔵)
Photo by 展覧会チラシ
グレコの作品の中でも珍しい宗教寓意。最前景に黒衣のスペイン国王フェリペ2世を中心として人々が跪き神の裁きを受けるべく天上に祈りを捧げている。
★「神殿から商人を追い払うキリスト」★
(1610年頃:マドリード、パレス・フィサコレクション蔵)
Photo by 展覧会チラシ
キリスト伝の中でもダイナミックな場面は、エル・グレコにうってつけの主題で、イタリア時代から繰り返し同じ主題で描いている。1595-1600年に制作された作品がロンドン・ナショナル・ギャラリーにある。
★「白貂の毛皮をまとう貴婦人」★
(1577-1590年頃:イギリス、グラスゴー美術館(ボロック・ハウス)蔵)
Photo by 「週刊 世界の美術館」
エル・グレコとの間に息子をもうけたヘロニマ・デ・ラス・クエバスを描いたとされる作品。
★「聖マルティヌスと乞食」★
(1599年頃、台南、奇美博物館蔵)
Photo by 展覧会チラシ
ローマが蛮族と戦っていた真冬のガリア地方で、ローマの軍人マルティヌスは、道端の貧者に外套を二つに裂いて与え、その夜キリストが現れて彼の行為をたたえたという。
トレドのサン・ホセ礼拝堂の祭壇画として制作されたオリジナルに基づく縮小レプリカがいくつか存在し、ワシントン・ナショナル・ギャラリーにもある(1597-1599年)が、本作は近年再発見された作品。
◆ルネサンスの優美 「ラファエロ展2013」◆
2013.3.2-2013.6.2
(国立西洋美術館)
ヨーロッパ以外の地での初開催となる「ラファエロ展」は、イタリアの全面協力の下、20点を超えるラファエロ作品がイタリア各地と、ルーヴル美術館、プラド美術館などから集結する予定です。
★「大公の聖母」★
(1504年:フィレンツェ、ピッティ美術館蔵)
Photo by 「週刊美術館」
ラファエロは生涯に多くの聖母子像を描いた“聖母子の画家”。
初来日となる「大公の聖母」はその代表的な作品のひとつ。18世紀にトスカーナ大公が愛蔵し、決して自分の手元から離さなかったことから、その名が付けられた作品。
★「聖ゲオルギウスと竜」★
(1503-1505年:パリ、ルーヴル美術館蔵)
Photo by 「週刊世界の美術館」
伝説上の騎士聖人であるゲオルギウスの竜退治の場面は、キリスト教の信仰による異教徒征服を意味し、画家たちの間で人気のテーマ。傍らにいる美しい王女はキリスト教によって改宗される異教徒の国を擬人化している。
同じ主題で1504-1506年頃に制作された作品がワシントン・ナショナル・ギャラリーにある。
★「エゼキエルの幻視」★
(1518年頃:フィレンツェ、ピッティ美術館蔵)
Photo by 「西洋絵画の主題物語 聖書編」
捕虜としてバビロンに連れて行かれた預言者エゼキエルが川辺で見た幻視は、有翼のライオン、牛、鷲、人間の姿をした動物を従えた神の姿だった。
小品ながらローマへ移住した円熟期の作品。
その他、
ダ・ヴィンチの「モナリザ」の構図を下敷きにしたといわれる「無口な女(ラムータ)」(1507年頃:ウルビーノ、マルケ州立美術館蔵)などが出品される。
◆これぞバロック 「ルーベンス」展◆
~栄光のアントワープ工房と原点のイタリア~
2013.3.9-2013.4.21
(Bunkamuraザ・ミュージアム)
ルーベンスのイタリア時代の作品を紹介すると共に、アントワープ工房の活動に焦点をあて、アントワープ画派の豊かな芸術展開を探る企画とのこと。
主な出品予定作品は、
★「ロムルスとレムスの発見」(1612-1613年頃:ローマ、カピトリーナ絵画館蔵)
★「ヘクトルを打ち倒すアキレス」(1630-1635年頃:ボー美術館蔵)
★「キリストの復活」(1616年頃:フィレンツェ、ピッティ美術館蔵)
★「毛皮をまとった婦人像」(ティツィアーノ作品の模写)(1629-1630年頃:クイーンズランド美術館蔵)
来年も、珠玉の名作に出会うための美術館巡りが楽しみですね。
西洋美術ファンにとっては、良い年になりそうです。
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