パリの名画散歩・・・・ルーヴルのまわり方、必見の美術館・作品は? [私的美術紀行]
★フォンテーヌブロー派「ガブリエル・デストレとその妹」1594年頃★
(ルーヴル美術館)
右側の女性がブルボン王朝初代の王、アンリ4世の最愛の女性ガブリエル・デストレ。
アンリ4世は生涯に56人もの愛妾がいたといわれるが、ガブリエルは、“王と国家に尽くした寵姫の鑑”ともいうべき存在。ガブリエルが公認の寵姫から晴れてフランス王妃になれる直前に急死したことで、アンリ4世は、ローマ教皇お墨付きの新しい王妃を迎えることになった。
莫大な持参金とともに、フィレンツェから嫁いできたマリー・ド・メディシスが、自分の生涯をルーベンスに描かせた21枚もの連作は、ルーヴル美術館のリシュリー翼3階の一室を埋め尽くしている。
時折暑い日がありますが、朝晩はめっきり秋らしさを感じる季節となりました。
私にとって東京に住むメリットのひとつは海外の名画を居ながらにして鑑賞できる美術展の開催が多いことです。今年もフェルメールやゴヤの名作が来日というので、展覧会に行くのがとても楽しみです。
秋の旅行シーズンにヨーロッパ方面で美術鑑賞を予定されている方もいらっしゃると思いますが、パリはルーヴルをはじめ多くの美術館があるので嬉しい反面、全部をまわりきれない悩みがあります。
私は、初めてのパリで、ルーヴルとオルセーを鑑賞し、その後ピカソ美術館やオランジュリーなどを見学しましたが、印象派の隠れ家といわれるマルモッタン美術館や、1900年パリ万博の会場となったプティ・パレ美術館、ポンピドゥー・センターなどまだ訪ねていない美術館がたくさんあります。
ルーヴルは、収蔵品が膨大で館内があまりに広いため事前にまわり方を研究しておかないと主要な作品を鑑賞するだけでも疲れてしまいます。
ガイドブックには見学持ち時間別のモデルコースなども乗っていますが、定番ベストコースを見学すると5-6時間は必要でしょう。
★レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナリザ(La Joconde)」
1503-1506年★
2回目のルーヴルとなった2008年は大晦日に見学という暴挙(?)だったので、チケット購入時から大行列し、モナリザの部屋では大柄な外国人に挟まれてもみくちゃになりながらの鑑賞。厳選した作品だけを約2時間で見てまわりましたが、今思えばもっと効率よく巡るコースがあったように思います。
★ラファエロ「聖母子と聖ヨハネ(美しき女庭師)」1507年★
★フェルメール「レースを編む女」1670年頃★
2009年の「ルーヴル美術館展にも来日した24×21センチという小さな作品は絵に近づいて細部まで鑑賞したい
さて、2006年に現代的に改装された「オランジュリー美術館」は、私にとって4度目のパリ訪問となった2008年にようやく入館することができたのですが、モネの愛好家にとっては見逃せない美術館です。
セーヌ川右岸のチュイルリー公園内にあるオランジュリー美術館は、皇帝ナポレオン3世が19世紀半ばに建てたオレンジ栽培温室(オランジュリー)が前身というこじんまりした建物。
1883年、43歳のモネはパリの北西約70キロのジヴェルニーに移り住んだ。
制作の傍ら庭造りに励み、自宅に隣接する土地の“水の庭”に日本から取り寄せた睡蓮を植えると、睡蓮のある風景をさかんに描くようになった。
自宅の睡蓮の池を描き始めた頃のモネは、画面に空、池の周囲の植物や橋などを描き込んだが、やがてその視線は池の風景から水面へ向かい、水面が映す世界へと移っていった。モネは睡蓮という主題のみで美術館を飾りたいと考えるようになった。
《モネ「睡蓮大装飾画」1914-1926年頃》
晩年は白内障に悩まされたモネだが、74歳の時、首相・クレマンソーと約束した「睡蓮大装飾画」の制作には86歳で亡くなる直前まで手を入れ続けた。
モネが視力・体力の衰えと闘いながら制作した8枚のパネルからなる 「睡蓮大装飾画」は、モネの希望に従ってオランジュリー美術館の楕円形をした二つの『睡蓮の部屋』に展示されている。
もともとはモネが望むように設計されながら、その後の改装で光を失っていた「睡蓮」が、天井から外光が降り注ぎ、変化する光の中で「睡蓮」を鑑賞できるようになった。
パリのオランジュリー美術館で、モネの「渾身の大作」の真ん中のソファに座って”360度の睡蓮の世界”にひたる至福のひととき。
★アンリ・マティス「赤いキュロットのオダリスク」1924-1925年★
モネの「睡蓮」鑑賞を主目的に行ったオランジュリーですが、地下1階に展示されているヴァルテール=ギヨーム・コレクションで印象派から1930年代までのフランス近代絵画をたどることができます。
ルノワールやセザンヌ、ピカソなど日本人にもなじみの画家の作品がたくさんありますが私にとっての発見はアンリ・マティスの作品でした。
オランジュリー美術館でこの作品を観るまで、私にとってマティスという画家の作品は絵画というよりも洗練されたデザイン画に近いイメージでした。
しかし、アルジェリアやモロッコを旅した50代半ばのマティスが描いた東方趣味の“オダリスク”は、マティス独特の色彩と装飾性を生かす格好の主題で、私好みのものでした。
私の手元にある美術書は、フランスの美術家、マルセル・デュシャンの「その前を立ち去ってはじめてマティスの絵があなたを捉えて放さないことに気づくだろう」というコメントを紹介しています。
たしかに、もう一度その絵の前に立ってみたいと思わせる作品でした。
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今回のテーマは、“パリ名画散歩”ルーヴルを中心にジャックマール・アンドレ美術館やマルモッタン美術館なども含めてパリの名画を巡ります。もちろん、パリに行く予定がなくても十分楽しめる講座です。
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