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「告白 源氏物語」・・・オペラで語る古典の祭典? [お気に入り]

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先週末、埼玉県ふじみ野市で開催された音楽イベント「告白 源氏物語」に行ってきました。

“千年の時を越えて今、甦る光源氏をとりまく54人の女たち、オペラで語る古典の祭典”というふれこみでしたが、朗読と音楽のコラボが面白くてあっという間の2時間でした。

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(「源氏物語絵巻」と「紫式部日記絵巻」:
源氏物語一千年紀記念切手」より


昨年は、「源氏物語」一千年紀ということで、記念切手も発売されるなど様々な催しがあったようですが、私がチェックしたのは今年の春深夜枠のTVでオンエアされたアニメ「源氏物語千年紀Genjiだけ。このアニメは、内容も大人チックで中孝介のエンディングテーマが印象的でしたが、“もっと見たい!”というところで終わってしまったのが残念でした。

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(開演前:緞帳の図柄は地元新河岸川の昔の風景)

「源氏物語」は平安女流文学の傑作ですから、物語のあらすじくらいはおぼろげに知っていましたが、マンガ「あさきゆめみしも、老眼のせいもあって途中で挫折していました。会場のお客様の中には、紫式部が書いたとされる文体のままで原作を読み込んでいる方もいらっしゃいましたので、シニア女性中心の数百人の観客で『源氏物語検定』を競ったら私など最低レベルかもしれません。


告白 源氏物語

告白 源氏物語

  • 作者: 杉谷 みどり
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2008/05/22
  • メディア: 単行本

開演前のロビーで「告白 源氏物語」の本を売っていたので思わず買ってしまいました。

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(杉谷みどりさん)

さて舞台の方ですが、はじめに、「告白 源氏物語」の著者である杉谷みどりさんが登場して、挨拶と本日の演目に関する簡単な解説がありました。

 “光源氏を中心にして書かれた「源氏物語」に登場する千年前の女性たちが、どんなことを感じ、何を悩み、何に心をときめかせていたのか。
時代を超えて聞く、彼女たちの告白。どうぞ音楽を肌で感じながら、悠久の歴史のかなたに心を遊ばせてください。
本日告白者として登場するのは、『桐壺の更衣』『藤壺』『朝顔』『夕顔』『六条御息所』『唐猫』『妹尼』の6人プラス1匹です。”

ふじみ野市立勤労福祉会館の地元、新河岸川の昔の風景を描いた緞帳があがりました。
オープニングは、約60人の混声合唱団による童謡『うさぎ』です。

大杉富子さんの朗読による、第一章『桐壺更衣の告白』が始まり、聴衆は千年前の姫君たちの住む世界へ引き込まれていきます。

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(メゾソプラノ歌手のアヴェ・マリア

朗読が終わると、白いヴェール姿の女性が登場し、カッチーニの『アヴェ・マリア』をメゾソプラノで切々と歌います。幼い光源氏を残して亡くなった桐壺とキリストの母となったマリアに“母”以外に共通項があるのか?その答えは、「告白 源氏物語」を読むと納得。

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(舞台左手に着席しているのが朗読者・大杉さん)

姫君たちの告白の朗読とそのイメージを表現する音楽(独唱、合唱)という構成で舞台は進行していきました。『告白源氏物語合唱団』は市民合唱団ですが、独唱するのはプロのオペラ歌手。オペラのアリアなどを『告白源氏物語アンサンブル』(ヴァイオリン、チェロ、ピアノ)をバックに歌い上げます。

20分間の休憩をはさんだ第五章は、ムソルグスキー『展覧会の絵』の不気味な旋律で幕を開けます。

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源氏物語の登場人物の中で最も有名な悪女、生き霊となってライバルたちを呪い殺したという六条御息所の告白』に、レスピーギの『哀れな心』はぴったりの選曲でした。

次の第六章『唐猫の告白』、ロッシーニの『猫の二重奏』という歌では、お二人のオペラ歌手のユーモラスな仕草に会場から笑い声が。

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そして、本日の最終章『妹尼の告白』では、モーツアルトが作曲しカトリックの聖歌としてなじみ深い『アヴェ・ヴェルム・コルプス』が唄われました。
一瞬教会の聖堂にいるような気分になりましたが、この歌は、ウイーン少年合唱団なども唄っているのでカトリックに縁のない方も聴いたことがあるはず。

最後は、パッヘルベルのカノンを日本語で合唱する『遠い日の歌』で閉幕となりました。

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暗くなった客席で目を閉じて朗読の声に耳を傾けていると、雑念を感じることなく「源氏物語」の大胆な解釈の世界に溶け込んで行くことができました。

“オペラで語る古典の祭典”という割にポピュラーな合唱曲が多かったのは、個人的に少し物足りなさを感じましたが、「源氏物語」のファン層を考えるとオペラばかりではとっつきにくいかもしれません。

実は、このイベントの発案者は元気埼玉というサイトを運営する松山さんという知人女性。
昨年「告白 源氏物語」の朗読会に参加して感動した松山さんは、“朗読と音楽を一緒に味わってみたい”と思いついたそうです。夢のようなアイデアを形にしてしまった松山さんのバイタリティと、素人の無謀な(?)思いつきにつきあってくれた音楽関係者の協力で実現したイベントでした。

後から知ったのですが、オペラ歌手で音楽監督を務められた小林浩さんは、前日リハでは過労のため声が出ない状況だったとか。最初の独唱の時は喉の不調が私にも感じられたのですが、唄っていくうちに声が伸びやかになっていくのがわかりました。市民合唱団の中には後期高齢者の方もいらっしゃると聞きましたが、歌う楽しさが元気の素かもしれません。

ところで、私たちはラジオ全盛期の深夜放送で育った世代なのに、テレビの『百聞は一見にしかず』という力業におされて、『朗読』の世界から遠ざかっていました。久しぶりに本格的な朗読を聴き、あらためて『朗読の力』を感じました。

会場で買い求めた「告白 源氏物語」の本を開くと、朗読者・大杉富子さんの、時には感情を込めて激しく、時にはゆったりと語りかけるような声が聞こえてくるような気がします。

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