「ルノワール+ルノワール展」でフランスを代表する美の巨匠父子の世界を体感 [私的美術紀行]
印象派の巨匠ピエール・オーギュスト・ルノワールは、日本人にとってもっともポピュラーな画家の一人でしょう。私もパリのオルセー美術館など欧米各国の美術館や展覧会でたくさんの作品をみています。
ルノワールは家族の肖像を好んで描いた画家ですが、偉大な画家の息子がフランスを代表する映画監督であったことはつい最近まで知りませんでした。
渋谷の文化村ザ・ミュージアムで5月6日まで開催中の「ルノワール+ルノワール展」は、画家の父と映画監督の息子 2人の巨匠を競演させたユニークな展覧会。
「家族の肖像」「モデル」「自然」「娯楽と社会生活」の4つのパートに分けて、二人の作品を展示しています。同じテーマで絵画と映画の抜粋を対比させることで、親子間の確かな関係に光を当て、2人の巨匠の根底に流れる共通性を明らかにしようという試みとのこと。
今回出品された絵画は私にとって既に鑑賞したことのある作品も多かったのですが、“父の絵”のすぐ近くで、そのテーマに関連した“息子の映画”の抜粋が流されているのが新鮮でした。
しかし、テレビでこの展覧会のテーマに関する特番を見て予習をしてきたつもりの私も、会場の薄暗い照明の中で解説の文字をすべて読むのは、『ど近眼+老眼』という視力の問題もあり、ちょっと辛いモノがありました。
とりあえず、会場をひと通り見た後で、もう一度戻って絵画と映画を対比しながら鑑賞することにしました。会場内にはソファもあるので、座って鑑賞することも出来ます。
帰り際、絵はがきでも買うつもりで立ち寄った会場内売店で公式ガイドブックを発見して購入しました。
写真や資料が満載のガイドブックを読んで、息子であるジャンの作品で、伝説のキャバレー「ムーラン・ルージュ」の誕生秘話を描いた「フレンチカンカン」は、彼が生まれた頃のモンマルトルが舞台であること、ジャンは、ルノワールの名作「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」が窓から見える建物で生まれたこともわかりました。
(下の写真はモンマルトルとサクレクール寺院)
ぴあMOOKという“このガイドブックを事前に見ていたら、もっと色々楽しめたのに”とちょっと悔しかったのですが、自宅でガイドブックを読みながらゆっくり余韻を楽しみました。
このガイドブックでも紹介されていますが、彼の最晩年のアトリエがあり、終焉の地となった南仏・カーニュ・シュル・メールを2005年の夏に訪ねました。
(”鷲の巣村”オ・ド・カーニュからの眺め)
カーニュで一家が住んでいた「レ・コレット」は現在美術館になっていますが、私が訪問したときはあいにく臨時の改修工事中とかで見学できませんでした。かわりにルノワールが愛した南仏の風景をみるために、そこからほど近い「オ・ド・カーニュ」という小さな村に行くことにしました。
モナコのグリマルディ家が所有していたお城にある美術館で、ふだんは「レ・コレット」にあるルノワールの作品と対面できました。
丘の上から地中海を見下ろす“鷲の巣村”には、多くの芸術家に愛された中世の村がそのまま残っていました。
ルノワールのアトリエを見学できなかったことは残念でしたが、かすかに潮の香りのするそよ風が心地よく、いつまでもカフェのテラスに座っていたいような至福のひとときでした。
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